大容量蓄電池を非常用電源として利用しようとする動きが加速している。戸建て住宅やオフィス以外にも意外な用途が開けてきた。マンションのエレベーターである。大京のマンションに東芝エレベータと組み合わせて採用された。
災害が発生したとき、マンションなどの集合住宅では戸建て住宅とは違った困難に直面する。例えばエレベーターだ。停電時にはエレベーターが利用できなくなり、高層階の住人は生活に支障を来してしまう。
大京は、東日本大震災以降、さまざまな取り組みを進めてきた。例えば自家発電装置*1)の採用や防災備蓄品の拡充などだ。2012年2月8日には、東芝エレベータと共同で蓄電池(二次電池)(図1)を使ったマンション向けエレベーター非常用電源を商品化することを発表した。
*1) 2013年6月に完成する東京都武蔵野市のマンションから導入を開始し、東芝以外のエレベーターを採用したマンションへ設置する。
「当社のマンションでは約6割が東芝のエレベーターを採用している。ここに電池を組み込む。この春以降に建設を始めるマンションのうち、10階以上で50戸以上のものに順次採用していく」(大京)。
「非常時に10時間動作させることが条件だ。住宅用エレベーターは6人乗りや9人乗りのものが大半であり、2〜6.5kWの出力が必要になる。今回のシステムでは10kWまで対応できる」(東芝エレベータ)。
東芝のリチウムイオン二次電池「SCiB」を選択した理由として、安全で長寿命であること、急速充放電特性が良いことを挙げた*2)。「エレベーターを動作させるには大容量が必要であり、そこに短時間で充電できなければならない。エレベーターは長期にわたって利用する製品なのでこのような電池の性質が役立つ」(東芝エレベータ、図2)。
*2)SCiBは電気自動車(EV)にも採用されている。例えば三菱自動車の「i-MiEV」(関連記事)や、ホンダの「フィットEV」(関連記事)である。
今後はエレベーターの運行にとどまらず、共用部の動力や照明へも電力を供給できるようなシステム開発を進め、電力需要のピークシフトやピークカット、さらには太陽光発電システムとの連携も検証する。
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