イタリア最大の工場や米国最大の工場が立ち上がるなど、太陽電池増産の動きが加速している。国内では、2011年7月にソーラーフロンティアがCIS太陽電池工場の年産規模を900MWまで高めた。
太陽電池の増産が相次いでいる。2011年7月には、3Sun*1)が、イタリア最大の太陽電池工場をシチリア州カターニア市に開所した。2011年下期からSi(シリコン)薄膜太陽電池を年産規模160MWで立ち上げ、2012年には年産480MWまで増強する。生産した太陽電池は欧州や中東、アフリカ市場に向ける。
*1)3Sunは、シャープとイタリアEnel Green Power、スイスSTMicro Electronicsの3社がそれぞれ33.33%ずつ出資した合弁会社である。出力135W、変換効率9.6%のタンデム接合型Si薄膜太陽電池を製造する。
米General Electricは、米国最大の薄膜太陽電池工場を建設し、2013年から生産を開始する。年間生産量は400MWだ。CdTe(カドミウムテルル)薄膜太陽電池を製造し、北米市場に向ける。
ソーラーフロンティアは、日本最大の太陽電池工場であり、世界最大のCIS薄膜太陽電池工場だと主張する国富工場(宮崎第3工場、宮崎県東諸県郡国富町)の生産水準を、2011年7月、予定していた年産900MWまで引き上げた(図1)。宮崎第1工場(20MW)、宮崎第2工場(60MW)とあわせて、年産約1GW規模に達したことになる。
投資決定から16カ月後の2011年2月に国富工場が商業生産を開始でき、同21カ月後の2011年7月にフル稼働に至った理由は2つある*2)。まず工場を新規に建造せず、日立製作所からPDP(プラズマディスプレイ)工場を購入したことだ。次に、同工場の従業員400人を再雇用したことだ。「PDPと薄膜太陽電池はどちらも大面積のガラス基板を利用しており、共通する工程も多い。熟練技術者を再雇用したことで、素早い立ち上げが可能となった」(ソーラーフロンティア)。
*2)従来の宮崎第2工場と比べて、投資効率も高まった。宮崎第2工場には150億円を投資し、150人が働く。生産規模は10MWである。一方、国富工場には1000億円を投じ、800人が働く。生産規模は900MWである。
国富工場で生産するCIS薄膜太陽電池は、Cu(銅)、In(インジウム)、Se(セレン)を、CuInSe2という比率で含む化合物太陽電池だ。数μmの厚みの化合物層で発電できるため、材料コストを低く抑えることができ、量産性もよい。変換効率がSi薄膜太陽電池よりも高く、温度依存性がSi薄膜太陽電池よりも少ないため、高温下での発電量が下がりにくいという優れた性質を備える。同社によれば、同出力のSi太陽電池と比較すると、実発電量が、年間で8%多くなるという。
同工場では生産規模を高めると同時に変換効率向上にも取り組んできた。「2011年2月時点では、面積(977×1257mm)当たりの出力が130Wから140W程度だったが、2011年7月には150W(変換効率12.2%相当)まで高めることができた。最も高出力なものは既に出力が164Wに達している」(ソーラーフロンティア)。
量産品と比較して面積が約14分の1である30cm角の小面積モジュールでは、変換効率を既に17.2%まで高めているため、この技術を今後、国富工場に移転していく。
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