以上のことから、対応デバイスという観点ではそれほど差異はないといえる。OS選定のポイントとしては、「既存資産やドライバの有無」がカギとなるだろう。ただし、開発規模という意味では、Standard 7よりもAndroidが大変であるし、AndroidよりもCompact 7の方が大変であるといえる。
ここでの選定のポイントは、「どのような使われ方をするのか?(要件として、パブリックなネットワークに接続する必要性など)」という点だ。また、もしAndroidを採用した場合だと、自由にアプリケーションをダウンロードして実行できてしまうので、それを防ぐような仕組み(Standard 7でいうApp Lockerの仕組みなど)が必要になってくる。
要件として、オフィス環境などにある「デスクトップPC(Windows OS)との親和性」という点ではCompact 7&Standard 7が最適だといえる。つまり、そのような用途の有無を考慮して選択すべきであるといえる。
開発のしやすさは、そのツール(開発環境)にどれだけ慣れ親しんでいるかでも左右されるため、ここでは詳細は割愛し、各OSでの比較した図を以下に示す。
ここまで、各観点におけるOS選定のポイントや留意点を紹介してきたが、機能面でいってしまうと、正直なところ、AndroidもWindows Embedded OSも“大きな差異はない”といえる。例えば、以下のように、Androidでできることは、Windows Embedded OSでもほぼ対応することができる(その逆もそうだ)。
ただし、「何だ。じゃあ、はやっているし“Android”で!」と飛び付くにはリスクがある。最低限、ここで紹介したような特徴や懸念点を把握しておくべきであるし、やはり、実現したいシステムの要件、例えば、リアルタイム性の有無やWindows PCとの連携の有無、さらには、既存資産(例えば、Linuxの資産)がどれだけあってどれだけ再利用できそうか、開発のしやすさはどうか(環境に対する慣れ)、いくら開発に投資できるか、ソフトウェア部品などを購入することでリードタイムを短縮できるかなどを考慮した上で、OSを選定することが重要だといえる。
以上、前回と今回で、日本マイクロソフトのセミナー「組み込み開発者セミナー 〜Android、Linux、ITRONなどのオープンソースを考察する〜」に登壇した安川情報システムの講演内容を基に、ITRONからCompact 7へ移行するメリット、AndroidとWindows Embedded OSとの機能面から見た違いについて紹介した。
実現したいシステムの要件を自身で把握することは比較的容易かもしれないが、各種OSからそのシステムに最適なものを選択するのには慎重な判断が必要となってくる。ただ、そうはいっても全てのOSの特徴を隅々まで把握することは難しいため、今回のような商用OSベンダーが主催するセミナーや勉強会などを活用して、情報収集をするのも1つの手段だといえる。この手のセミナーでは、最新製品の説明だけでなく、次世代製品を含めたロードマップなども紹介されることもあるので、求めている(欲しい)機能が実装されるタイミングを知ることができるし、自身のシステム移行のタイミングを検討する上での判断材料を集める良い機会になるだろう。
本特集(【前編】・【後編】)で紹介した内容が、ますます高度化する組み込みシステム開発におけるOS移行やOS選定のヒント、助けになれば幸いだ。
ITRON? Android? Windows Embedded? 〜OS移行のメリットとOS選定のヒントを探る〜【前編】
最新! Windows Embedded Compact 7の概要Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
よく読まれている編集記者コラム