ダッソー・システムズはV6R2011xのプレスブリーフィングを実施。検索エンジンや組み込みソフトウェア開発ツール統合の詳細が示された
ダッソー・システムズは2010年12月20日、同社のPLM製品群の最新版V6R2011xについて、日本のメディア向けにブリーフィングを行った。
V6R2011xは2011年11月23日に発表されているが、日本向けに詳細情報が示されたのはこの日が初となる。今回のリリースでは製品群全体で約900の機能追加が行われているという。ここでは、ブリーフィング内容から主要な情報をピックアップして紹介する。
V6製品群では、2010年6月に買収した検索エンジンベンダ「Exalead」の検索エンジンをアプリケーションに統合、設計図面情報の検索が柔軟に行えるようになっている(同社ではこれを「the Search-Based Application(SBA)」と表現している)。
また、同じく2010年6月に買収した組み込みソフトウェア開発ツールベンダ「Geensoft」の製品も統合されている。具体的には、CMMIレベル2以上で要求される要件管理が可能な「Reqtify」、Eclipseベースの車載用組み込みソフトウェア開発ツール「AUTOSAR Builder」、モデル駆動開発向け制御ロジック検証ツール「Control Build」の3製品もV6製品群に統合された。これにより、エレ・メカ・ソフトの連携は一層強化されるという。Geensoft由来のソフトウェア群は学生向けパッケージにも含まれる。
CATIAでは、ファスニング部設計時の効率を向上させる機能も盛り込まれている。図面の形状などを基に、組み付け可能な部品(ネジ、ナットなど)を登録されたライブラリから自動取得して選択、一方の図面で留め具を指定すると、対になっているもう一方の部品の該当個所にもその止め具を受けられる形状が自動作成されるようになっている。細かな作業ではあるが、人為的ミスを防ぎ、作業効率を向上させるポイントだ。ファスニング属性はCATIA V6から盛り込まれた情報で、2つの対応する図面を容易に特定し、双方のデータに情報を追加できる。
「複数のファイルをひも付け、相互に編集内容を反映させていくことは、従来のファイルベースのデータ管理では難しい機能」だという(ダッソー・システムズ CATIA BT 営業部 ディレクター 田中 昭彦氏)。
なお、設計図面データには新しくファスニング属性が定義されることになるが、上位互換性は保証されているので、既存ユーザーのアップグレード時にも大きな問題は発生しないとしている。
このほか、3次元設計データからインタラクティブなレイトレーシング(光などの「波」を物理演算でシミュレートする演算処理、3次元CGのレンダリングなどに用いられる)をCATIA上で実現する機能も搭載している(インタラクティブ・レイトレーシング機能)。
一般に、自動車などのプロモーション映像やカタログなどの制作では、CADの図面データを基に、CG制作のために不要な情報を手作業で排除、CGソフトウェア向けにデータを変換して取り込む必要がある。このため、製品CGを制作するには完全にフィックスした設計データを納入して制作を指示しなくてはならない。納入以降に設計に変更が発生した場合は手戻りが多くなる。
今回提供されるインタラクティブ・レイトレーシング機能は、CATIAの中でCGデータを生成する機能であるため、設計変更が発生すると自動的にCG映像側にも反映される。このため、「仕上がりの質感、自然な環境下に置いた際の見え方などを検証しながら設計を行える」(田中氏)という。製品出荷直前の工程での手戻り回避が期待できる。同社ではこの機能は、家電メーカーなどのハイテク業界でも活用できると見ている。
今回発表になった新機能の一部は、動画投稿サイト「YouTube」の専用チャネルでも紹介している。
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