“Free”なPLMが 「一気通貫」システムを推進する先取り突撃! DMS2010

2010年6月23〜25日の3日間、東京ビッグサイトで「第21回 設計・製造ソリューション展」が開催される。開催に先立ち、@IT MONOist編集部では、出展を予定しているプログレス・パートナーズに展示の見どころを聞いた。

» 2010年06月02日 00時00分 公開
[原田美穂,@IT MONOist]

 昨年、ライセンスフリーのPLMとして注目を集めたプログレス・パートナーズが提供するオープンソースのPLMシステム「Aras Innovator」。製品デモンストレーションはもちろん、製品バイナリを封入したCDの配布は大盛況だったが、 今年はどのような展示になるのだろうか。@IT MONOistでは、出展を控えた同社に、今年のブースの見どころを聞いた。

今年は実践的導入事例を多数展示

 「昨年は初出展ということもあり、そもそもAras Innovatorとは何なのかをご紹介するということがメインでしたが、おかげさまである程度認知されつつあるようです。そこで、今年はAras Innovatorの導入事例、他製品とのインテグレーション事例、新しいソリューションのご紹介、今後のロードマップなど、Aras Innovatorの応用事例を数多くご紹介していこうと思っています」(広報部)

 本年度は、来場者が持つさまざまな課題を具体的に解決することに主眼を置き、オープンソースビジネスモデルで提供されるライセンスフリーのPLMシステムであるAras Innovatorのさまざまな活用事例を紹介するという。

 「実際の導入事例や、品質管理にスコープを当てた新たなソリューション、また他製品とのインテグレーション事例、サブスクリプション契約やコンサルティングフィーなどをかけることなく、お客さまだけで導入した事例などを紹介します」(広報担当)

 特にインテグレーション事例では、共同出展社である応用技術の電子パーツカタログシステム「PLEX」、営業支援システム「EASY」とのインテグレーション、サン・プラニング・システムズの「iGrafx」とのインテグレーション事例をそれぞれ紹介する予定だという。実際にどのような使い方をしているのか、触れて理解するチャンスとなるだろう。このほか、同社ブースでは、Aras InnovatorをインストールしたPCを複数台設置する。

 「実際に触っていただいてAras Innovatorの操作性を体験していただくことが可能です」(広報部)

”Free”を標ぼうするPLMシステムの可能性

 Aras Innovatorはライセンスフリーで提供されている。オープンソースビジネスモデルを採用するユニークなPLMソリューションだ。ライセンスフリーの利点として、実際の製品版で評価を行ってから正式導入を決定することが可能な点が挙げられる。フル機能をライセンスフリーで使用できるため、評価段階で、導入時に想定される必要なカスタマイズを含めた評価が可能だ。初期コストを圧縮する意味でもこの特長は非常に魅力的だ。

プログラムレスでリアルタイムに構成変更が可能なモデルベースSOA

 Aras Innovatorの実装はモデルベースのアプローチを採用、XMLスキーマを利用した構成管理を行っている。このため、ビジネスルールや、フォーム、ワークフローなどを、システムインテグレータに頼ることなく、安全かつ容易にリアルタイムに変更できる。

 「GUIからの簡単な設定のみで、データモデル、UI、ワークフローなど、PLMシステムが必要とするさまざまな機能を構築できます」(広報部)

 システムインテグレータを介した長期間にわたる要件定義や仕様擦り合わせといった煩雑な作業なしにカスタマイズできる。これによりPLMシステムの導入期間を飛躍的に短縮でき、「お客さまによっては4週間で導入を完了したケースも」(広報部)あるという。

 システム間の接続では、マイクロソフトが提供する.NET FrameworkのSOAコンポーネントを利用しており、Webサービスによる接続が容易に実現する仕組みだ。接続先のシステムが対応していれば、各種PDMやERP、MESなどとの接続がシンプルな操作で実現する。

 マイクロソフトが提供するフレームワーク上で実装されることから、ほかのマイクロソフト製品群との接続性も高い。グループウェアであるMicrosoft SharePoint Serverや、SQL Serverで提供されるBI機能やレポーティング機能を使ったOffice製品群によるドキュメント類の提供など、利点が多い。

ライセンスフィー問題だけで「一気通貫」のPLMプロジェクトを断念してはならない

 製品のライフサイクルにかかわる情報をすべからく管理したいというニーズは依然として高い。その一方で、ライフサイクルに関係する人数分のライセンス導入には費用が膨大になることもあり、投資に踏み切ることができない、というジレンマを抱えている企業は多い。

 「結果的に、PLMシステムを設計部門のみ、または特定の人のみで使うにとどまり、製造、保守、販売、購買などとの情報共有まで運用が広がらないという話をよく聞きます。加えて製品設計における品質管理に関しても問題意識が高いものの、依然として紙での管理が中心となっている企業が多数を占めます」(広報部)

 こうした問題による業務阻害の一例として、品質問題の例を挙げてくれた。

 「例えば、品質管理資料としてFMEAは作成するものの作ったことに満足してしまい、その結果をRPN評価して改善活動までつなげた運用が実施できていないといった問題を抱えているお客さまが多いようです」(広報部)

 Aras Innovatorはさまざまなデータを、リレーションを保って管理できるため、ユーザーは関連性のあるデータをたどっていけば必要なデータを見つけることができるという。またAras InnovatorにはFMEAなどの品質管理のソリューション機能が標準で用意されているため、設計情報と関連を持って品質管理情報を保持できるとしている。

ビジネススピードにマッチしたシステムアーキテクチャが必要

 導入したPLMシステムを外部環境の変化(REACH規制など)や業務ルールの変更に対応させたいものの、現状のシステムを少し修正するだけでも莫大な費用がかかるため対応が遅れてしまうといった問題も多くあるという。

 「情報は生きているため、それに応じてシステム側が迅速に変更に対応していく必要があります」(広報部)

 前述のとおり、Aras InnovatorはモデルベースSOAアーキテクチャを採用しているため、GUIベースのシステム設定を、コンパイル作業を行うことなく、オンデマンドで実装を確認していくことが可能だ。モデルベースSOAを採用したAras Innovatorはシステムの追加開発コストを抑えた形で、システムを最新の業務に合わせることが可能だ。

展示会を対話とヒントの場にしたい

 同社はこの展示会ブースをどういう場にしようと考えているかを伺ってみた。

 「まだAras Innovatorがどういうソリューションなのかをご存じないお客さまもいらっしゃいます。そのようなお客さまにまずは名前を知っていただき、Aras Innovatorがどのような実力を備えたツールなのか、それを知っていただく場にしたいと考えています」(広報部)

 また、展示会ではプロジェクト管理に最適なツールを探している、品質の問題が起こっており、どのように解決したらいいのか分からない、紙が多くてドキュメント管理を効果的に行いたいなど、具体的かつ明確な課題を持っている来場者が多い。

 こうした課題を抱えている来場者に対し、同社は双方の対話とヒントの場にしたいと考えている。

 「こちらから一方的に展示、説明するだけではなく、お客さまとの対話を通じて、展示だけでは表現し切れない内容について、『その課題を解決するにはこういったソリューションがある』という具体的なお話をできます。その中でわれわれも新たなソリューションのヒントをもらうことができます。そういった活発な議論ができる場になればと考えています」(広報部)

日本的擦り合わせ型モノづくり体系のITシステム化のベースシステムに採用

 Aras Innovatorは、東京大学ものづくり経営研究センターを中心に活動する「統合型ものづくりとITシステム研究会」の「統合型ものづくりITシステム(IMIS:Integrated Manufacturing Information System)」の実証プラットフォームとして採用された。

 「『統合型ものづくりとITシステム研究会』では、日本の製造業が培ってきた“擦り合わせ型”モノづくりの知識を体系化して分析し、今後の日本企業の競争力向上に関する研究および競争優位をもたらすIT活用のフレームワークの提案を行っています。今回、実証プラットフォームに採用されたことを機に「ものづくりITシステム」のあるべき姿の構築の場面で、実際のシステムソリューションを持っているベンダの立場から提言を行っていきたいと考えています」(広報部)

◇ ◇ ◇

 SOAアーキテクチャによるPLMシステムをライセンスフリーで提供する、他に類を見ない同社ソリューション。無償とはいえ、エンタープライズシステムに求められる機能を十分にカバーしている同社製品の実力がどのようなものかは、ぜひ会期中に同社ブースで確認してほしい。

展示会名 第21回 設計・製造ソリューション展(DMS2010)
開催日 2010年6月23日(水)から25日(金)
会場 東京ビッグサイト
ブース番号 東1ホール 12-19

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