「返品の業務プロセスに問題があるので、関係部門を巻き込んで新しいプロセスを作りたい」
「金型の管理に非常に手間が掛かっているので、ITを活用して改善したい」
「開発期間を短くするために、コンカレント化を進めたい」……
企画書を書く理由はさまざまだと思いますが、費用が掛かるもの、活動のために関係者のまとまった工数が必要なもの、他部門の協力が必要なもの、新製品や新サービスにつながるものなど、稟議が必要なものが中心だと思います。
つまり、企画書は稟議の意思決定者が「よし、やってみよう」という内容になっていなければ、意味がありません。どれだけ情報を詰め込んでも、ビジュアル的に凝っても、やってみようと思ってもらえないのであればそれは企画書として失敗です。
よくある誤解の1つに、「企画書は相手を説得するもの」という考え方があります。説得するツール、と考えるので、読む気もうせるほど情報が過剰な企画書や、情熱だけを打ち出した論拠に欠ける企画書が作られてしまうのです。
人が心から納得し、行動するのは、やはり自分自身が「やってみたい」と思えることでしょう。緻密(ちみつ)な理論を積み上げて説得モードを取りがちな技術系男子にこそ、ぜひこのポイントを理解いただきたいと思います。
では、具体的に何をするのか。まず、その企画の承認にかかわる意思決定者をリストアップし、それぞれの「関心事」を明確にすることから始めます。
目標管理制度が導入されている会社であれば、意思決定者の目標が「関心事」に相当しますし、そうでなくてもどのような指標に責任を持っているか、会社で期待されている役割は何かが容易に想定できると思います。
そして、今回の企画が各意思決定者のどの関心事に関係するかを明らかにします。
意思決定者 | 関心事 |
---|---|
A課長 | ・プレス工程の生産性向上 ・プレスの不良率低減 ・段取り替え時間の短縮 |
B部長 | ・製造原価の低減 ・製品の不良率低減 ・顧客クレームの低減 ・新製品の短時間立ち上げ…… |
…… | …… |
表 意思決定者の関心ごとをまとめる |
もし今回の企画が「金型のデータベース管理をして、管理レベルを上げよう」というものであれば、「これが実現すれば、工程の段取り替え時間の短縮が見込まれ、結果生産性向上や、原価の低減につながる」というように、意思決定者の関心事を中心にストーリーが出来上がってくると思います。このストーリーが企画書の骨子、強調して伝えるべきメッセージとなるのです。
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