以上、デバイスにQuebecをインストールする手順を簡単に説明しましたが、インストールの間には、コンポーネントの選択や、ロケール、インストール先など、さまざまな選択、いい換えると“ユーザーによる操作”が必要になります。しかし、これらはすべて応答ファイルを作成することで“自動化”することが可能です。
この応答ファイルを作成するのに使用されるのが、「Image Configuration Editor」です。これを用いて応答ファイルを作成し、「Image Builder Wizard」でこれを処理することにより、自動でのインストールが可能になります(図3)。例えば、「Windows Embedded POSReady 2009」は、DVDからインストールして使用する組み込みOSですが、応答ファイルを作成して一緒の起動媒体に入れておくことで、自動インストールも可能になります。これと似たような仕組みであるとご理解ください。
「Image Configuration Editor」は応答ファイルを作成するツールです(画面19)。これはToolkit DVDからインストールできます。Toolkit DVDには、WinPEのイメージや、Boot Configurationの設定ツール、イメージをブータブルISOに変換するツール、また「ImageX」というWIM形式のインストールイメージをキャプチャー、取得、適用するツールが含まれています。
これらのツールのおのおのの機能は、Windows VistaやWindows 7の自動インストールを行う手段として、「WAIK(Windows Auto Installation Kit)」や「OPK(OEM Pre-installation Kit)」にも含まれています。また、応答ファイルや構成セットを作成するツール「SIM(Windows System Image Manager)」(画面20)もこれに含まれます。
インストールするコンポーネントを選択できること、およびコンポーネントが多い、などの違いを除けば、各セクションの設定変更内容などはほとんど同じですので、操作体系については「WAIK」のドキュメントを参照していただければと思います。特に「WAIK」のドキュメントは日本語化されていますので、Quebecのドキュメントが英語であることを考えてもとっつきやすいかと思います。
Quebecは組み込みOSですので、組み込み向けの機能も当然あります。
「Enhanced Write Filter(EWF)」「File Based Write Filter(FBWF)」「Registry Filter」のようなフィルタードライバや、「Message Box Default Reply」のようなヘッドレスデバイスサポート。また、「Bootable Windows USB Stack」によりUSB Bootも可能です。なお、Windows Embedded Standardであった「El Torito CD Support(書き込みのできないCDから起動する機能)」は除外されたようです。
Windows 7が発売されると、Windows 7を搭載したPCを目にすることになるでしょうし、Windows Embedded Enterpriseファミリとして、Windows 7 Ultimate/Professional for Embedded Systemという形で、組み込み機器でもWindows 7を搭載した装置が出荷されることでしょう。
また、本稿紹介したようにWindows Embedded Standardでも、Windows 7の機能が使えるようになる日もすぐそこまで来ていますので、今回公開されたCTP版を利用して機能やハードウェア要求の評価をいまのうちから行うといいでしょう。特に、WES2009のように開発環境でOSイメージを作成しなければならないというような複雑な手順を踏まなくとも、Runtime DVD1枚で、OSをインストールして評価できる点で、スピーディーなスタートが切れる仕組みになっていると思います。タイムリーな製品の出荷というのは、どの市場においても重要です。この機会にぜひお試しください!
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