CTP版が一般公開されたばかりの「Windows Embedded Standard “Quebec”」の入手から導入までの流れを紹介する
先日(米国時間2009年9月1日)、「Windows Embedded Standard “Quebec”(以下、Quebec)」のCTP(Communication Technology Preview)版が一般公開されました。本稿では、マイクロソフトが提供する最新の組み込みOS「Quebec」について説明します。
現在、Windows XP SP3をベースとした組み込み向けOS「Windows Embedded Standard 2009(以下、WES2009)」がリリースされています(2008年11月リリース)。これは、「Windows XP Embedded」として提供されていた従来の組み込みOSの後継製品として位置付けられています。
今回紹介するQuebecはWES2009とは異なり、Windows XPをベースとしたOSではなく、「Windows 7」をベースとした組み込みOSです。Windows 7は2009年10月22日に出荷開始予定ですが、RTM(Release To Manufacturer)版が現在一部に公開されています。読者の皆さんの中にも、すでに使っている方がいるかもしれません。Windows 7の機能や特徴については、すでにいろいろなメディアなどで紹介されていますので、ここでの説明は割愛しますが、『Windows 7の機能が組み込み機器に利用できる』というのは、製品をデザインするうえで重要なポイントとなるのではないでしょうか?
ちなみに、コードネームである“Quebec”という名称は、カナダの“ケベック州”が由来だそうです。正式版では「Windows Embedded Standard 2011」となる予定です。
前述のとおり、現在QuebecはCTPプログラムの一環として公開されています(原稿執筆時点)。通常CTPは、招待もしくは紹介という形でアナウンスされるのですが、今回のQuebecは“一般公開”になります。「Windows Live ID」をお持ちの方であれば、どなたでも自由にダウンロード、評価が可能です。
なお、上記のサイトでは以下がダウンロードできます。
Documentation以外はISO形式のイメージになりますのでDVDに書き込みを行い、使用することになります。なお、Windows 7ではイメージからDVDの書き込み機能が搭載されていますので、DVD書き込みソフトウェアを使わなくとも、イメージからDVDを作成できます。
ここで、WES2009には含まれていなかった64bitのサポートがあることに気が付くと思います。64bit OSはいままで一部の「Windows Embedded Enterprise」ファミリで提供されていましたが、Quebecの登場により、今後は64bit OSを使用する製品も増えていくことでしょう(最近のCPUは、ほとんど64bitに対応しています)。
表1をご覧ください。これはWES2009との違いをまとめたものです。
Windows Embedded Standard “Quebec” | Windows Embedded Standard 2009 | |
---|---|---|
ベースOS+Windowsテクノロジ | Windows 7 Ultimate(Internet Explorer 8、Windows Media Player 12) | Windows XP Professional SP3(Internet Explorer 7、Windows Media Player 11) |
OSイメージ作成ツール | Image Builder Wizard Image Configuration Editor Target Analyzer Windows WIM |
Target Designer Component Designer Component Database Manager Target Analyzer SDI |
イメージ作成方法 | イメージの構成は開発環境、およびターゲットデバイスで行える。イメージはターゲットデバイスで組み立てられる | イメージは開発環境で作成し、ターゲットデバイスに展開 |
プロセッササポート | 32bit、64bit | 32bitのみ |
OSイメージ | 最小300MB | 最小40MB |
OS構成ブロック | 機能パッケージ 100 ドライバパッケージ 1000 |
コンポーネント 1000 ドライバ 9000 |
アクティベーション | 必須(SLP対応も可能) | 不必要 |
表1 QuebecとWES2009との違い |
ここでは、ターゲットデバイスへのインストールという観点から説明したいと思います。
WES2009の場合、開発環境を使用してOSのイメージを作成し、これをターゲットデバイスに展開するという方式を取ります。コンポーネントを作成する際は「Component Designer」を用い、ターゲットOSイメージを作成する際は「Target Designer」を用いてOSイメージを作成します(図1)。なお、作成されるOSイメージは、起動ドライブ内のディレクトリ構造を含んだ“ファイル群”になります。
一方、Quebecの場合、最終OSイメージはターゲットデバイスで組み立てられます(First Boot Agentを終了しないとOSイメージの作成が完了しないという点では、WES2009と同様です)。そのため、Runtimeは起動用のOS(WinPE:Windows Preinstallation Environment)も含まれた形で提供されていて、そこで「Image Builder Wizard」により、ターゲットの構成を行うことになります(図2)。
最終的には開発用PCにインストールする「Image Configuration Editor」を用いて、ターゲットデバイスの構成を作成し、Answerファイルと呼ばれるシステムの構成を決定する応答ファイルを保存して、「Image Builder Wizard」によりターゲットOSイメージを作成することになります。また、評価を手っ取り早く行いたい場合は、「Image Builder Wizard」のみでインストールを行うことも可能です。
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