従来のWindows XP Embeddedとの“違い”を交えながら、Windows Embedded Standard 2009」の概要と新機能について解説!!
先ごろ(2008年11月)、マイクロソフトよりWindows XP Embedded SP2 Feature Pack 2007(FP2007)の後継バージョンである「Windows Embedded Standard 2009」がリリースされました。読者の中にはすでに、この最新版の組み込みOS(Windows Embedded Standard 2009)が搭載されたデバイスに実際に触れた方がいらっしゃるかもしれません。また、開発者の方であれば開発ツールなどを使い、実際にWindows Embedded Standard 2009搭載製品をリリースされた方がいらっしゃるかもしれません。
本稿では、こうした読者の皆さんの知識の再確認のために、そして、Windows Embedded Standard 2009の導入を検討している読者のために、Windows Embedded Standard 2009の概要、特に従来のWindows XP Embeddedとの違いについて詳しく紹介したいと思います。
ご存じのとおり、Windows XP Embeddedは、Windows XP Embedded/SP1/SP2/FP2007とバージョンアップしてきましたが、何より組み込み開発者から支持されている点といえば、OSイメージを開発、カスタマイズおよび構築するツール「Target Designer」や、コンポーネントを登録するツール「Component Database Manager」などのWindows Embedded Toolsを利用した開発手法がそのまま生かせるところだと思います。
リリースされて間もないWindows Embedded Standard 2009を搭載した製品がすでに市場に投入されはじめているのは、その位置付けがWindows XP Embeddedのバージョンアップ版であり、従来の開発環境がそのまま継承されていることが大きな理由だといえます。
いわゆる“インクリメンタル・アップデート”でありながら、製品名を変更したことで新製品としてリリースされたWindows Embedded Standard 2009ですが、従来のWindows XP Embeddedとの違いは、OSのアーキテクチャや開発環境ではなく、主に以下の3つになります。
Windows Embedded Standard 2009では、インストールとそれに伴うSQL Database Serverの環境構築の変更、Windows XP Service Pack 3へのアップグレード、そして新たなコンポーネントの追加が行われました。図1にWindows Embedded Standard 2009の構成を以下に示します。
図1のとおり、Windows Embedded Standard 2009は、Windows XP Service Pack 3のコンポーネントに加え、新たに追加されたコンポーネント群、組み込み特有の機能である「Embedded Enabling Feature(EEF)」を搭載した構成となります。
それでは、それぞれの変更点についてさらに詳しく見ていきましょう。
はじめに、インストールと環境構築について説明します。
Windows Embedded Standard 2009はインストールの形式が変更されています。前バージョンのWindows XP Embedded SP2 FP2007では、Windows XP Embedded SP2のインストールCD8枚とWindows XP Embedded SP2 FP2007へのアップグレードCD1枚の合計9枚をシステム構築に使うこともあり、環境構築に一苦労するといったケースがありました。今回、DVD1枚になったことでこの辺りの手間も軽減されています。
それでは、Windows Embedded Standard 2009のインストール要件はどのように変わったのでしょうか? 図2をご覧ください。
Windows XPとWindows Vistaとでは若干必要なインストール要件に違いがあります。OS開発時にPCのリソースを多く使用しますのでメモリやディスク容量、CPUに十分余裕のある開発環境を用意する必要があります。特に、Target Designer使用時に占有するメモリ、コンポーネントの作成時のデータベース登録とOSビルド時に消費するディスク容量に注意が必要です。また、インストールの際、「Repositories」フォルダは別パーティションとして、十分な空き領域を確保することをお勧めします。
また、Windows Embedded Standard 2009からは、コンポーネントのデータベースとして「Microsoft SQL Server Desktop Engine(MSDE)」ではなく「SQL Server 2005 SP1以降」のインストールが必須となっています。
さらに、DVD1枚になったことで従来は別インストールであった各「Language Pack」のインストールもインストーラーのオプション上で行うことが可能となりました。Language Packは日本語、ドイツ語、韓国語、イタリア語をはじめとする計23言語をインストールすることが可能です。Windows Embedded Standard 2009は、従来のWindows XP Embeddedと同様、“Windows XP 英語版+各言語のMUI”という構成になっています。
Windows Embedded Standard 2009のインストール手順(の概要)は以下のとおりです。
インストールが完了すると、Windows XP Embeddedで提供されているTarget DesignerやComponent Designerなどの各種ツールを利用して、開発を行うことができます。
続いて、大きなアップデートとして挙げられるWindows XP Service Pack 3の適用について紹介します。
ご存じのとおり、Windows XP EmbeddedはPCのように「Windows Update」を利用できません。また、「Windows Server Update Services(WSUS)」などによるアップデート運用を行っていない場合、OSは開発・ビルドを行った時点のモジュールでイメージが固定されてしまいます。こうしたこともあり、今回のWindows Embedded Standard 2009では、ビルド時にWindows XP Service Pack 3と同等のセキュリティパッチが適用されるため、セキュリティが向上しています。
またWindows XP Service Pack 3の適用以外にも、以下のモジュール(Windows XP Service Pack 3準拠のモジュール)が追加されています。
「Network Access Protection(NAP)」とは、Windows Server 2008で導入されたもので、ネットワークに接続しているコンピュータのソフトウェア構成、システム構成に関するポリシーを強制的に適用したり、クライアントコンピュータが要件に準拠していない場合にネットワークへのアクセスを制限できます。Windows Embedded Standard 2009のコンポーネントには、「NAPCLCFG.MSC」、つまりNAPクライアントの構成「Microsoft Management Console(MMC)」スナップインが含まれておらず、クライアントの構成ができません。そのため、NAPは主に、クライアントの検査、デバイスに改変があった場合の接続の制限に限って利用することになります。
今回、MSXMLのバージョンが上がり、特に信頼性とセキュリティが向上しています。またW3C(World Wide Web Consortium)に準拠しており、System.XML 2.0との互換性があります。
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