プロジェクトが実行されるプロセスでは、各社さまざまな問題が発生し、改善テーマも多岐にわたりますが、ここでは典型的な問題に対する改善事例をいくつか紹介します。
朝会とは毎朝15分程度の立ちミーティングを実施するものです。このミーティングを実施することで、残日数管理が容易にできるとともに、意思決定に絡むコミュニケーションの改善が可能になります。
朝会のやり方はいろいろありますが、多くの企業では、メンバーが作業をする項目を1日程度に分解して付せんに書き込み、今週作業予定(TO-DO)、実施中(Doing)、完了(Done)の欄を用意したボードに張り付けていきます。この張り付ける状況をリーダーがウオッチすることでプロジェクトの進ちょく状況を確認します。
朝会を実施すると、学生症候群・マルチタスキングといったバッファをムダにする人間行動を防ぐことも可能です。
作業が着手可能になっても着手しない学生症候群の原因は、ほかの作業を先にやらなければならないマルチタスキング状態が主な原因です。
作業するメンバーは、複数の業務を同時に依頼されれば、どれかの着手を遅らせるか(学生症候群)、切り替えながら作業(悪いマルチタスキング)するかしなければならず、業務を断るということは基本的にできません。
朝会を実施していれば、プロジェクトリーダーがこのような状況を迅速に把握でき、バッファ状況に従ってどちらを優先すべきかを速やかに整合できます。こうすることで「意思決定待ち」による遅れを減らすことができるようになります。
バッファをムダに使う大きな原因として見られるのが、品質回復のための手戻り作業です。CCPMを展開するうえで、品質改善活動を同時に行うことは非常に重要なのです。
改善活動のテーマとして、レビューの改善が取り上げられることがありますが、レビューの改善方法として最も強力なのが、ペアプログラミングと呼ばれる方法です。
ペアプログラミングは、ソフトウェア開発で行われる方法ですが、メカ設計・電気設計などの業務でも応用が可能です。大きな効果がありますので検討してみるといいでしょう。
ペアプログラミングでは、2名がペアを組んで1台のPCに向かい、設計・プログラミング・テストなどの業務を行います。このとき、1人が業務を行う間、もう1人は傍らでレビューを行い、30分程度の間隔で交代していきます。
ペアプログラミングを実施している間、作業は継続的にレビューされている状態になり、大きく品質が改善できます。
さらにペアプログラミングでは、バッファをムダに消費する「早期完了の未報告」を防止することも可能です。早期完了の未報告は、タスクの完了基準が不明確な場合に発生します。完了基準が不明確だと、ほとんどの技術者は、ほぼ完成したとしても、さらに品質を上げたいと考え、予定期間が残っている限り目いっぱい完成レベルを上げようとしてしまいます。これは結果として早期完了の未報告と同じ状況です。これを防ぐためにタスクの完了基準を明確にするのですが、完了基準では必要な成果物を定義することはできても、どの程度まで品質を深めればいいのかを定義するのは困難です。
よって品質基準は、どうしても最後は人の目で確認する必要があります。ペアプログラミングでタスクを実施していれば、ペアの2名でタスクの終了が判断できるようになり、常識的な判断が可能になります。これにより結果的に早期完了の未報告を防止できるのです。
さらにペアプログラミングはリソースの柔軟性を作る効果もあります。あるタスクを実施している人が突然急病になれば、ほかの人が代わりに実施しなければなりません。しかし、代わりに実施するというのは現実的には非常に困難です。もし、ペアプログラミングで実施していれば、比較的スムーズに代替できます。
またレッドゾーン対策として人を増員・交代させる場合も、ペアプログラミングで柔軟性を持たせていればやりやすくなります。同時に、ペアの組ませ方を人財育成の観点で考えれば高い教育効果も得られます。
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