HEV/EV用電池パックを管理するBMS回路の設計ポイント電気自動車(2/2 ページ)

» 2009年01月01日 00時00分 公開
[Jon Munson(米Linear Technology社 シニア・アプリケーション・エンジニア),Automotive Electronics]
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セルバランス回路

 LTC6802に使われる標準的な電池入力回路を図2に示す。この回路にはセルバランスを取るための小さなP型MOSFETスイッチと負荷抵抗、さらにフィルタと保護用のほかの受動素子が含まれている。

 セルバランス用スイッチの制御は、マイクロプロセッサから電池モニターICへコマンドを送信することによって行われる。高い精度を得るため、電池モニターICはA-D変換時にセルバランス用スイッチをオフにすることができる。それによって、テストするセル内のIR電圧降下を最小にして、各電池セルの電圧測定を正確に行うことができる。また、動作休止時に電池モニターICは自動的にすべてのバランス用スイッチをオフとし、電力消費を最小限に抑えることで不必要な電池の放電を防止している。

図2 保護機能付きLTC6802セルバランス回路(1セルだけの回路を表示) 図2 保護機能付きLTC6802セルバランス回路(1セルだけの回路を表示) 

 セルバランス用スイッチは、図2に示すように、電池入力に直列に抵抗を追加することにより、自己テスト用として使用することもできる。スイッチがオンであれば、セルの測定値は予測可能な電圧変化を示し、スイッチとA-Dコンバータポートの両方が正常に機能していることを確認できる。ただし、そのためにはA-D変換している間、セルバランス用スイッチが有効であることが必要だ。

活線挿入に対する配慮

 一般的に、データ収集用の電子回路は、電池が接続される前には給電されていない。さらに、電池から電子回路へのインタフェースは、通常多数の接点を備えたコネクタを必要とする。その結果、ランダムに接触が生じる可能性のある状況で活線挿入が行われる。このため、特に図2に示されているフィルタキャパシタンスが充電される時に、通常とは異なるサージ電流経路が形成されてしまうことがある。

 ICには保護回路が内蔵されているのが一般的で、取り扱いや組立作業時の損傷を防ぐことができる。しかし、外部容量に関連した大きなエネルギーを処理することは考慮されていないため、プリント基板上に保護回路を実装することを推奨したい。スイッチとICの両方のためのいくつかの保護レベルを図2に示す。

 回路に電力が印可されると、接続する方法によっては、フィルタ抵抗両端に高い瞬間電圧が現れることがある。この電圧のほとんどは関連するMOSFETのゲート-ソース間に加わる。このため、各MOSFETのクランプ保護に加えて、直列ゲート抵抗(例えば3.3kΩ)を追加することを推奨する。クランプを保護する機能は一般に、トランジスタのパッケージに内蔵されているが、もし内蔵されていなければ、ツェナーダイオードを外付けすることで、この保護を行うことができる。

リファレンス設計の詳細

 LTC6802は12個の電池セルを直列接続したリチウムイオン電池パックを1個のICで管理できる。この12セルモニター回路を1つの回路ブロックとして、12個よりもセル数が多い電池モジュールの電圧を管理する場合には、この回路ブロックを必要な数だけ複製したものと、マイクロプロセッサや絶縁されたデータトランシーバで構成することができる。この場合、追加するICは単にそれらのSPIにカスケード接続するだけで済む。

 LTC6802は独自のレベルシフトアーキテクチャにより、従来の電圧モードで出力することが可能なため、SPI信号でマイクロプロセッサと直接通信することができる。IC間の通信では、カスケード接続されたIC同士が、電流モードでシリアル通信を行う。

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