「第19回 設計・製造ソリューション展(以下、DMS展)」でトヨタケーラムは来場者のニーズに合わせた6つのコーナーと「ハンディスキャン3D」によるリバースエンジニアリング実演で同社製品の効果を説明する。
トヨタケーラムは、トヨタ自動車内におけるサプライヤのシステム化支援事業が母体となって設立されたトヨタグループの一企業だ。そういった経緯からして、顧客は自動車関係ばかりではないかと考えそうだが、家電や教育機関などさまざまな業種や分野に渡るという。大手企業だけでなく中小企業も多い。同社の自動車製造の知識を生かした3次元CADのほかにも、CAM、意匠デザインツール、生産管理ツールと、同社製品のバリエーションは幅広い。
今回のDMS展では10小間の大ブースと2小間の小ブースの2カ所で出展する。2小間の小ブースは今回から新設された「技術継承ゾーン」内である。
過去の出展では「Caelum XXen(ケーラム ゼン)」「Caelum KKen(ケーラム ケン)」といった製品名を前面に出したアピールをしてきた。
しかし今回からはアプローチを変え、「製品設計コーナー」「意匠・デザインコーナー」「加工・金型コーナー」「自動車コーナー」「技術・技能伝承コーナー」、「セキュリティコーナー」と6つのコーナーを設け、その下に関連製品をひも付けるというやり方となる。1つの製品がテーマをまたいで何回も登場することもあり得る。
この理由について、トヨタケーラム 第2事業部 副部長 倉知 稔氏は、「ブースを訪れてくださるお客さまから『これは何に使うものなんですか?』とよく質問があったものですから……。製品名を見ただけでは、それがいったい何に使われるツールなのかが、どうも伝わりづらいようでした。それで今回のようなブース構成となったわけです」と話した。
製品設計コーナーでは、直感的な操作性のCADやスムーズなチーム連携、半自動設計などにより業務効率を上げ、設計品質の向上を図ろうという提案を行う。ここでの主役はやはり、3次元CADのCaelum XXenである。こちらはファンクショナルモデリング(各部位の機能を優先して形状定義する手法)とチーム設計機能という2大特徴を持つ。
同社は“カジュアルCAD”とうたっているが、履歴にとらわれない直感的な操作性という意味での“カジュアル”と、ミッドレンジ帯価格という意味での“カジュアル”という意味がある。そんな“カジュアルCAD”のファンクショナルモデリングや面張り機能、組み立て図の自動作成、2Dレイアウト検討など、設計を効率化するうえで便利な機能を紹介する。
意匠デザイナーと機構設計者との協調設計における意思疎通は悩ましいものである。意匠デザインコーナーでは、同社が代理店となっているthink3社製品を用いたデザインレビューの効率化を主に提案する。3次元CADの「ThinkDesign」はソリッドとサーフェス両方の機能を兼ね備えており、グローバルシェイプモデリング(GSM)の機能を持つ。「複数の面をあたかも1つの面であるかのように、ゴムのように伸び縮みさせたり、面をならしたりとフレキシブルに変形できます」(倉知氏)。また、タブレットを使い画面上のデザイン画に形状の基となる手描き曲線を書き込むと、リンクしている3次元モデルも追従するという機能もある。
加工・金型コーナーでは、金型設計ツールやCAMを展示し、加工工数や材料費を削減するための提案を行う。ここではCAMシステムのCaelum KKenが主役だが、特長の1つとして牧野フライス製作所の曲面加工エンジン「FFエンジン」を搭載している。最新版の4.0からはプレス部品を離型しやすくする「プロファイル2番逃がし」を強化し、三菱マテリアル社製の工具を採用し突き加工を可能としたことで、深物の加工工数を大幅に削減できるとしている。同社の調べでは、従来の高送り加工で19分かかっていた加工が、4分まで短縮されたという。
自動車コーナーは文字通り、産業にフォーカスしたコーナーだ。自動車産業における製造品質改善やコストダウンに有効な製品を提案していく。同社の自動車分野向け3次元CAD「Caelum ?」もここに登場する。また、「COSTOPTIMIZER」を提案する。例えばプレス部品のブランクレイアウトと3次元CADの設計検討を連動させることで、材料の余りを少なくして歩留まり改善する。「車の生産台数は何万台レベルですから、この削減効果は大きいはずです」と倉知氏は話す。ここのところの鉄鋼材料高騰へ一手を示すものといえる。
技術・技能伝承コーナーは、いま製造業が悩まされている継承者不足などの人材問題にアプローチする。「団塊世代技術者の雇用延長は適用されたものの、もってあと数年ですよね。当社でも、技能伝承への取り組みを行っています」と倉知氏は話す。その取り組みの一端が、同社の「指南車(しなんしゃ)」だ。技術者の知識や技能をフローチャート化するツールである。
最後に紹介するセキュリティコーナーは、機密保持への関心が高まってきている近年に対応する「セキュアプリント」という印刷情報管理ツールを紹介する。設計現場では「A4の図面はこっちのプリンタで」「A0の図面は大型のプロッタで」といったように、図面サイズによって出力先が異なるのが常だ。この製品はプロットデータを直で管理し、プリンタのメーカーに依存しないデータ管理が可能だ。
10小間ブース内のステージでは、同社が販売する「ハンディスキャン3D」(Creaform社)によるリバースエンジニアリングの実演を行う。倉知氏はそれが大きな見どころの1つだと話した。
「お客さまはすでにWebなどで調べて、さまざまなベンダのCADに関する情報を知り尽くしています。CADそのものはもう目新しいものではありません。しかしお客さまはブースを訪れる際に目新しいものを常に求めています」(倉知氏)。来場者に目新しいイベントをということでリバースエンジニアリングの実演を企画したという。
ハンディスキャン3D は1250gと片手で持てる重量だ。それで実物の形状をレーザーでスキャンしていき、そのデータを点群処理し、3次元パッチ処理を行う。スキャンのスピードは、「体感的には、スプレーでシューッとペイントしていくぐらいの速さ」だと倉知氏は説明した。精度は最大で40μmであるという。これは、車のシートやハンドルなどの形状データを収集するのに使える。車内は狭いので、例えば3次元寸法測定器は到底持ち込めない。そこで活躍するのが、このハンディスキャナというわけだ。
取り込まれた形状データはCADだけではなく、CAE(解析)やCAM(機械加工)、CAT(検査)にも適用可能だ。金型の見込み形状をCADの設計データに反映するといったこともできる。上記のリバースエンジニアリング実演で、これらの過程を同社の製品群を交えて具体的に説明していくとのことだ。
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