いったん微小なき裂が発生した後も、荷重が繰り返し入力されると、き裂の起点から伝播していく。き裂の先端では荷重が掛かるごとに塑(そ)性域*2を更新する(「エネルギー解放する」)微小き裂が粒子の間を進んでいき、き裂を広げていく。この段階を「ステージ?」と呼ぶ。
図3(a)のように、横一文字にき裂が入った状態から、(b)(c)のように、き裂を基準にして部品が上下に引っ張られ荷重が加わると、き裂は開口する。 (e)は(a)の状態より、先端が飛び出しているが(図中の破線を基準にする)、これは先端で剪断破壊が起こり、き裂が進展したことを示す。
最後に、部品の断面積が極端に小さくなると、荷重を受ける材料が少なくなるので、一気に破断する。この段階を「ステージ?」と呼ぶ。
疲労き裂の発生から進展、破断に至る過程および要因は種々あり、き裂が発生したからといって、荷重方向によってはき裂が進展、あるいはき裂発生直後に破断するなどさまざまな現象がある。
き裂を検出する方法は検査用染料(目視)がある。これは、定期的に検査対象となる部位に専用の染料を塗布し、表面の状態(「き裂がある?」)を目視で観察する方法である。
上記方法以外にもき裂検出方法は種々あるが、その発生初期段階で発見することは非常に困難である。また、部品のき裂を発見しようと、分解と組み立てを頻繁に繰り返すことは、時間、費用を考えれば、極めて厳しい。なので、定期点検の際にチェックする方法を取る場合が多い。
部品は加工方法が決められており、その表面の粗さ、仕上げ度を図面に表現しなければならない。実は、この表面粗さや仕上げ度が構造の強度に影響する。
ステージ?の説明で示したように、表面に滑り面、すなわちせん断が発生し、き裂となるので、つまり面の粗さが粗いほど滑りは早く発生するということになる。
そのほかの影響因子としては、以下の2つが挙げられる。
ちなみに残留応力*3を測定する方法も多々あるが、精度良く測定する方法は容易ではない。
以下では、製品の耐久性を設計するに当たり行う評価の方法について説明をする。
疲労強度設計の評価手法を大きく分けると、
の2つがある。
また、図4のような処理の手順となる。
ちなみに、これ以外の方法として「損傷許容度設計」もあるが、適用製品や対象部位は限られる。損傷許容度設計とは、例えば、航空宇宙やプラントが対象で、ある程度の損傷(小さなき裂)を含む所定のメンテナンス期間隔でシステムの一部を交換する、という設計手法である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.