ここで読者の皆さん自身の現場改善力をチェックしていただきたいと思います。図1の「現場改善力チェックシート」をご覧ください。<スタート>の質問項目からYes/Noでお答えいただき、適宜矢印に沿ってお進みください。評価結果は3種類のタイプに大別されますので、ご自身が行き着いたタイプを図2の評価説明に従って確認してみてください。
あなたはどのタイプになりましたか? 以下のような手順で結果を評価してみましょう。
(1)選んだ質問項目のうち、(A)(B)(C)項目それぞれについてYesを+1点、Noを−1点として計算します。
(例)(A1)がYes、(A2)がYes、(C2)がNo、(B4)がNoでタイプXに行き着いたときは、
(2)次に各点数が、各タイプの点数レンジのどのあたりかを確認します。ちなみにA項目は「固有技術観点」、B項目は「改善意欲」、C項目は「マネジメント能力」を表します。
果たして、皆さんの判定はどうだったでしょうか?
もちろん、ここに提示した評価結果は相対的な目安にすぎませんので、あまり深刻にお考えいただくことはありませんが、3タイプではそれぞれ現場改善力向上の取り組み方法が異なります。つまり皆さんの有する「固有技術観点」「改善意欲」「マネジメント能力」に応じて、適切なトレーニングや改善活動計画を考えていくことが大切なのです。どうしてこの3つの評価軸が現場力向上のカギとなるのかは、次回以降詳しく説明していきたいと思います。
加えて申し上げておくと、改善プロフェッショナルを目指そうとする方には、明らかな職務適性上の向き不向きがあります。もしも不向きな方に改善能力向上を求めたとすれば、ただ結果が出ないだけではなく、本人にとっても組織にとっても非常に不幸な体験をもたらしてしまうかもしれません。「たかが改善ごとき」と侮って痛い目に遭ったのでは、元も子もないでしょう。例えば筆者がクライアント企業をお手伝いさせていただく場合には、この人選には特に気を使っています。不退転の改善活動を実行できるパワーと、「やらされ感」を与えずに現場を巻き込めるバランス感覚に優れた方が最も望ましいといえます。慎重を期すために、チーム全員でゲームなどに参加していただき、各人の潜在的な能力を見極めたうえで抜てきすることもしばしばあります。
皆さんもご承知のとおり、改善行為自体を難しくとらえる必要はありませんが、人材の適材適所と方法論・ツールの適所適用を心掛けないと、現場の「やらされ感」ばかりが増幅してしまう恐れがあります。しかも活動の先頭を担う改善のプロは、いわば改善活動の名を借りた業務改革を断行することに等しいので、確固たる問題解決能力を発揮しなくてはならないのです。また経営者や現場責任者が現場の良識だけに委ねて判断を丸投げしまうと、能力向上のような非財務的な成果が見極められず、形式的な評価で終わってしまうため長続きしません。せっかく取り組むのであれば、中途半端な結果に終わらないような仕掛けを用意し、維持継続できる仕組みを作ることを強くお勧めします。現場改善力の向上は、“いまさら”ではなく、“いま進行している”モノづくりの衰退を食いとめるために不可欠な処方箋なのです。
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次回は、現場改善力向上の基本的な考え方と評価タイプ別に改善力を習得するための取り組みレシピを紹介していきます。
眞木和俊(まき かずとし)
株式会社ジェネックスパートナーズ
代表パートナー
GEでシックスシグマによる全社業務改革運動に、改革リーダーのブラックベルトとして参加後、経営コンサルタントに転身。2002年11月ジェネックスパートナーズを設立。日本企業再生を目指して企業変革活動の支援を推進している。著書に『図解コレならわかるシックスシグマ』(ダイヤモンド社)、『これまでのシックスシグマは忘れなさい』(ダイヤモンド社)などがあり、中国、韓国、台湾などでも翻訳出版されている。
ジェネックスパートナーズ
お客さまとともに考え、ともに行動するパートナーとしての視点から「成果を創出できるマネジメント手法の導入」および「人材を競争力の源泉にするためのリーダー育成支援」を行うプロフェッショナルファーム。国内外を問わず幅広い企業、公共団体に対して、数多くの企業変革、人材教育の実績を持つ。
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