設計後半で多用する「干渉チェック」。3次元CADが使いこなせない導入期に、干渉チェックをしたいがために、2次元設計したものを3次元モデル化した方も多いのではないでしょうか?
しかし、この干渉チェック、部品がリストアップされ干渉している部分にハイライトが入ったりしますが、複雑な形状同士が干渉していると、どのような形状で干渉しているかが、とても分かりにくかったりします。
ノンヒストリーCADでは、干渉チェックと同時に、上記の「積」形状を作ることができるため、かなり便利なのですが、私はもっぱら「差」のコマンドを使います。
このコマンドでは、部品Aを部品Bの形状で削除できるのです。つまり干渉部分を削除してくれるわけです。
「差」コマンドを実行した後、接触面を逃がしたい量だけオフセットしてあげれば、ニゲ形状の完成です。この「差」コマンド、ほかにも、工夫すれば部品同士のクリアランスが見られたり、かなり便利に使っているコマンドです。
ヒストリーCADだとほかの人がみて構造の理解が難しくなってしまう点やファイルサイズの問題から、一度作った形状を変更不能だからごっそりカットして、そのうえに新しい形状を作って行くという手法は“禁じ手”の1つといえるでしょう(こういう部品を他人に見られると恥ずかしいし……)。でもノンヒストリーなら、これは常とう手段です。
ダイナミックモデリングができるのだから、チマチマ変えるのも手段ですが、ヒストリーがないのだから、思い切って切り捨てて、新たに設計し直すのも有効な手段です。
これまでの説明を踏まえて、環形状に斜めボスと複数の穴が構成されている部品をモデリングして見ましょう。
次に穴部を作りましょう。
設定が面倒な斜めに傾いた平面を定義しなくても、ノンヒストリーCADの特徴を使うことで、少々厄介な形状も簡単な手順で描くことが可能になります。
現在のさまざまな製品で、すべてが新規でオリジナルなんてものは存在せず、相当に新規性の高いものでもせいぜい30%程度が新規の設計というのがいいところではないでしょうか。
この時間の使い方が、とても重要なファクターだと考えられます。
「チェンジニアリング」な部分を効率的に進めるには、いかに使えそうな部品や部位を素早く探し、部品化できるかにかかってきます。
ファイルサイズが小さいのが、ノンヒストリーCADの特徴の1つ。そうであれば、構想開始時に参考になるファイルを丸ごといただきましょう。そして、「流用できる部品」「使えそうな部品」「参考にしたい部品」を残して削除します。ここでポイントは、「使えそうな部品」と「参考にしたい部品」です。これらの部品は、チェンジニアリングをするための宝の山です。使えそうな機械要素(=部位)を切断し、これから設計する部品のDNAにしましょう。
「チャレンジニアリング」な部分は、機構の構想や詳細設計でも試行錯誤の繰り返しになります。そこで、特に重要なのは、その機能のDNAを決める構想設計の段階です。
構想段階でフリーハンドのポンチ絵を描いてイメージを膨らませることは非常に重要だと思います。しかし、毎年あるいは半年ごとに、「世界最小・最軽量」「いままでと同サイズで機能UP」をしていくような製品においては、とてつもない革新的な技術進化で生み出されるよりも、それぞれの部品の0.1mmずつの積み重ねの結晶で生まれてくるケースが少なくありません。このように極度にスペースが限られてしまったり、コスト対応のために部品が多機能化してしまった場合、ポンチ絵での構想はほとんど役に立たず、新しいレイアウトや機構アイデアのかなり詳細な部分まで詰めて行って、やっとそのアイデアが使えるかどうかが判定できます。
このように「あちらを立てれば、こちらが立たず……」といった感じで、いくつかの部品が複雑に絡み合ったような形状設計の場合、ヒストリーCADでは、どうやってスケッチを描くかが非常に重要となるため、形状を作るために時間が掛かってしまったり、最初の意図と違う形状になってしまい形状変更不能に陥ったりする場合があり、時間のロスが発生しがちです。一方、ノンヒストリーであれば、いま思っているアイデアを描く、そしてその形状に触発されたアイデアをさらに盛り込んでゆくことが可能です。このサイクルが、チャレンジしなければならない部分の構想に非常に役に立つと考えます。
上記のように一生懸命に考えた形状が、結果的に使えない形状に終わっても、残念がることはありません。失敗に終わった部分を「切断」しておいて、備忘録のファイルにでも保存しておきましょう。使えるチャンスが来るかもしれません。
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