NACSとトヨタ、GMとホンダ……海外勢との連携に進展:自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)
北米市場での電動車の充電に関して、また動きがありました。トヨタ自動車が、2025年からEVの充電に北米充電規格を採用することでテスラと合意しました。
ホンダGMの自動運転タクシーに経産省と国交省も反応
今週、海外自動車メーカーとの連携でもう1つ話題になったのは、ホンダがGM(General Motors)やGMクルーズとともに東京都心部で自動運転タクシーを提供する件ですね。2026年初めから、まずは数十台でスタートして500台に増やす計画です。3社は東京に合弁会社も設けます。
注目すべきは、2026年から始める自動運転タクシーサービスで使用する車両がステアリングやペダル、運転席のないレベル4の自動運転車である点です。インフラとは連携しない自律型の自動運転システムで、高精度地図や遠隔監視システムも使用して走行する予定です。
地方ではなく東京都心部で、さらに無人運転車でタクシーサービスを営業するので、3社は関係省庁との連携が不可欠だと考えています。初めは緩和規定を活用しますが、最終的には型式認証も取得することを目指しています。
関係省庁も早速動き出しました。経済産業省は国土交通省などと連携し「レベル4モビリティ・アクセラレーション・コミッティ」を立ち上げると2023年10月19日に発表しました。同コミッティは経済産業省と国土交通省が進める自動運転開発と実装のプロジェクト「RoAD to the L4」の下に設置します。
メンバーは経済産業省、国土交通省、警察庁、総務省、関係自治体で、2023年11月ごろから活動を開始します。直近の議題はホンダやGM、GMクルーズによる取り組みです。企業からの事業概要やスケジュールの説明、関係省庁による課題や論点の整理、事業の進捗状況や関係省庁の許認可状況の共有などをアジェンダに挙げています。
失敗やトラブルがあっという間に広がるSNS
今回のホンダやGM、GMクルーズによる発表を受けて、米国で提供中のGMクルーズの自動運転タクシーサービスのことを改めて調べてみました。意外だったのは営業時間です。午後9時から翌朝午前5時(地域によって午前5時半、午前6時)までとなっているのです。
GMクルーズのサービス提供地域の1つであるサンフランシスコ市の深夜の移動手段を調べてみると、治安の面では公共交通機関はやめた方がいいというアドバイスがあり、多くの人が配車アプリの利用を勧めています。配車アプリのドライバーとして働く人々は決まったシフトがあるわけではありませんので、深夜はどうしても配車アプリの台数は少なくなるでしょう。そうなると、配車されるまでの待ち時間が長くなり、待つ場所によっては防犯上不安な場合もありそうです。
そこに自動運転タクシーを投入するのは、多くはないが確実にある深夜の移動需要を取り込む上で効果的ですし、乗客を運ぶための運転をなりわいとする人たちとの共存という意味でも紳士的です。乗車料金も、従来の配車アプリ(ライドヘイル)と同等に設定しているそうです。
個人的には、サービス開始後のSNSへの投稿やレピュテーションリスクへの対応に注目しています。SNSを観察していると、GMクルーズの車両が何らかの理由で立ち往生し、交通の妨げになっている様子を撮影した動画が複数出てきます。GMやGMクルーズは自動運転タクシーの車両の事故率が低いことをアピールしていますが、こうしたトラブルは間違いなく起きていてSNS上で拡散されているのです。
ある動画の投稿に対してGMクルーズは「大規模なイベントによって無線帯域幅に制約が生まれ、車両との通信に影響が出た」と返信しています。投稿から返信まで半日程度と比較的迅速でしたが、このような動画は「自動運転ってまだまだだな、場合によっては迷惑だな」とネガティブな印象を与え、社会受容性を下げるのに十分なインパクトを持っています。それが技術的に再発防止が可能なトラブルだったとしても、です。
「夜遅い時間で、事故じゃない単なる立ち往生ならいいじゃない」と言いたい気持ちはありますが、夜遅くても緊急車両や急用のあるドライバーが立ち往生に巻き込まれて困ったかもしれないと考えると、そうもいきません。発展途上で「絶対にトラブルが起きない」のは困難ですので、誠実に丁寧に説明して理解を得ながら実績を積み重ねていくしかなさそうです。
今週はこんな記事を公開しました
- モビリティサービス
- ジャパンモビリティショー2023
- 電動化
- CEATEC 2023
- スマート工場最前線
- オートモーティブメルマガ 編集後記
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