デルタ電子が新ブランド戦略と脱炭素に注力、日本法人の売上高は5年で倍増へ:CEATEC 2023
デルタ電子は、「CEATEC 2023」の展示ブース内で会見を開き、同社の新たなグローバルブランド戦略とカーボンニュートラル施策、日本市場における事業戦略について説明した。
デルタ電子は2023年10月17日、「CEATEC 2023」(2023年10月17〜20日、幕張メッセ)の展示ブース内で会見を開き、同社の新たなグローバルブランド戦略とカーボンニュートラル施策、日本市場における事業戦略について説明した。
会見の登壇者。左から、デルタ電子日本法人 代表取締役社長の華健豪氏、台湾本社 取締役 チーフブランドオフィサーのShan-Shan Guo氏、同社 チーフサステナビリティオフィサーのJesse Chou氏[クリックで拡大]
1971年に台湾で創業したデルタ電子は、1991年に日本法人を設立するなど、グローバルに事業を展開している。全世界の従業員数は約8万人で、営業拠点は156カ所、工場は51カ所、研究開発拠点は73カ所に上る。足元の業績も右肩上がりで推移しており、2022年の売上高は前年比14%増の128億9000万米ドル(約1兆9300億円)となっている。
デルタ電子台湾本社 取締役 チーフブランドオフィサーのShan-Shan Guo氏は「これまで産業分野を中心としたインダストリアルブランドとしての展開に注力してきたが、2022年からはより消費者に近いコマーシャルブランドとしての展開も広げていくことを決めた。創業から掲げるミッション「To provide innovative, clean and energy-efficient solutions for a better tomorrow(より良い明日のために革新的かつクリーンで高効率なエネルギーソリューションを提供する)」はそのままに、「インテリジェント」「サステナブル」「コネクティング」という3つのブランド価値を追求するテーマを設定した。
この新たなブランド戦略では、コア技術として追求してきた高いエネルギー効率をイメージする従来のイメージカラーである青色(Delta Blue)に加えて、IoT(モノのインターネット)によって創意工夫を盛り込む水色(Delta Aqua Blue)、サステナビリティを示す緑色(Delta Grass Green)から成る3色のイメージカラーを用いている。青色から水色、緑色に変化するグラデーションにより「コマーシャルブランドへの移行や再利用可能なエネルギーループを示していく」(Guo氏)という。
カーボンニュートラル施策では、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギー(再エネ)で調達することを目標とする国際的イニシアチブのRE100に2021年に加盟しており、2030年までにグローバルでの事業活動で使用するエネルギーの全てを再エネにすることを宣言している。台湾本社 チーフサステナビリティオフィサーのJesse Chou氏は「2022年時点で再エネ比率は63%に達しており、2030年までの達成は確実だ。台湾のハイテク企業で最初のRE100達成を目指す」と述べる。
グローバルでの再エネ調達に貢献しているのが、日本国内にある太陽光発電所だ。発電能力は赤穂エナジーパーク(兵庫県赤穂市)が4.6MW、福知山エナジーパーク(京都府福知山市)が1.4MWとなっている。さらに、デルタ電子のエネルギー効率利用のノウハウを活用したオンサイトPPA(電力販売契約)の事業を日本国内でも展開しており、既に広島の自動車部品サプライヤーに導入されているという。
日本市場では、オートモーティブ、エネルギー、オートメーション、データセンターインフラを4大重点市場として事業展開を強化する。オートモーティブ市場では、完成車メーカー向けにEV(電気自動車)の中核部品である車載充電器や電動パワートレインを、自動車部品メーカー向けに薄膜部品や熱管理デバイスを提供する一方で、急速/普通充電器などのEV充電インフラの展開も進める。エネルギー市場では、系統調整用蓄電池システム、ハイブリッド型パワコン、Chou氏が導入事例を挙げたオンサイトPPA事業に注力する。
データセンターインフラ市場は、デルタ電子が得意とするUPS(無停電電源装置)や高効率の冷却技術に加えて、データ処理をより現場側となるエッジで行う上で最適なコンテナ型データセンターの提案も進める。オートメーション市場は、工場向けオートメーションとビルオートメーションに分かれる。特に、工場向けオートメーションでは、日本国内では生産機能の国内回帰を志向する動きがある一方で人手不足が課題になっており、そこでの最適解となるスマート製造ソリューションを提案していく方針である。
2023年5月に日本法人の代表取締役社長に就任した華健豪氏は「大変革の時代を迎える中で社会がよりレジリエンスを求めるようになっており、日本市場でもデルタ電子の技術で応えていきたい。現在、日本法人は、デルタ電子グループ全体の売上高の約10%を担っている。足元で極めて引き合いの強いオートモーティブ市場を含めて高い成長を狙えると考えており、5年後の2028年には売上高を倍増させたいと考えている」と意気込みを述べている。
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