グリーンプレミアムを経済価値に、製造ラインなどの再エネ利用認証事業がスタート:脱炭素
日立製作所は2022年12月13日に記者会見を開き、同年10月に設立した一般社団法人「パワード・バイ・アールイー認定委員会」が企業の製造ラインや設備、サービスごとの使用電力が100%再生可能エネルギー由来であることを認定し、パワード・バイ・アールイーのロゴや再生可能エネルギー利用証明書の発行などを行う事業を12月1日から開始したと発表した。
日立製作所は2022年12月13日、アート&エコロジーおよびリコーと共に日立製作所本社(東京都千代田区)で記者会見を開き、同年10月に設立した一般社団法人「パワード・バイ・アールイー認定委員会」が企業の製造ラインや設備、サービスごとの使用電力が100%再生可能エネルギー由来であることを認定し、パワード・バイ・アールイーのロゴや再生可能エネルギー利用証明書の発行などを行う事業を12月1日から開始したと発表した。
認証によって再生可能エネルギーを普及
パワード・バイ・アールイー認定委員会は、環境やエネルギー分野でのコンサルティングなどを手掛けるアート&エコロジーと日立製作所が、製造ラインや設備、サービス単位の再生可能エネルギーの利用拡大を目的に設立した。
アート&エコロジーの代表取締役でパワード・バイ・アールイー認定委員会の代表理事を務める竹内孝明氏は「昨今、カーボンニュートラルへの関心の高まりを受けて、この先再生可能エネルギーを利用する企業が増えていくことが見込まれる。再生可能エネルギーを健全に普及させていくためには、きちんと再生可能エネルギーが使われているかを認証していくことが不可欠と考え、この委員会を立ち上げた」と設立の狙いを語る。
パワード・バイ・アールイー認定委員会では、製造ラインや設備、サービスごとの再生可能エネルギー利用率の計測手法や開示項目などについてルール設計を行う。認定事業の開始時点では、再生可能エネルギーの利用状況の計測およびデータ化を行うサービスとして日立製作所の「Powered by RE」を活用する。企業がルールに沿って申請した再生可能エネルギーの証明を、データに基づき審議し、認定する。
認定後に発行する2次元バーコードをスマートフォンのカメラアプリで読み込めば、どんな再生可能エネルギーを利用しているのかなどが表示される仕組みだ。認定後は3カ月ごとに対象ラインなどの再生可能エネルギー利用状況をモニターし、申請内容と相違があれば認定の取り消しも有りうる。また、パワード・バイ・アールイー認定委員会自身も国際的な認証機関から定期的に監査を受け、仕組みが正常に稼働している保証を受ける。
既に素材関係の企業から申請が出ており、審議中だという。今後数年をめどに20社の参画と100件の認定を目指す。
再エネ利用をグリーンプレミアムとして付加価値に
日立製作所 グローバル環境統括本部 環境事業本部 デジタルグリッドプロジェクトリーダ 青木雅博氏は「従来もグリーン電力証書や非化石証書など、再生可能エネルギーに関する証明書はあったが、われわれの証明書はグリーンな電力が最終的に何の製品に、いつ使われているかという利用側の証明になる新しいコンセプトだ」と語る。
電子情報技術産業協会(JEITA)および日本電機工業会(JEMA)などの業界団体や関連省庁とも連携を図る。計測手法やデータ化のガイドライン策定や制度設計の提言などを通じて、認定に活用可能な新たな計測、データ化サービスの参入を促し、認定事業の拡大を目指す。
カーボンニュートラルは日本のみならず世界的な関心事だ。今回の活動の海外展開に関して青木氏は「海外、特に欧州でのヒアリングを通じて、このようなニーズが日本より確実にあることも分かっており、われわれと同様の取り組みを進めようとしている企業、団体もあることも確認している。まずはわれわれが日本国内で進めて、同じようなものが海外で立ち上がった時に国際的な相互接続性を担保していくことが現実的ではないか」と語る。
2022年12月12日には設立後初の参画企業として、リコーが運営委員に加わっている。
リコー リコーデジタルサービスビジネスユニット デジタルサービス開発本部 IoTソリューション開発センター エキスパートの東義一氏は「リコーは事業で使用する電力を100%再生可能エネルギー化する国際イニシアチブであるRE100に日本企業として最初に参加した。再生可能エネルギー普及に対する高い使命感を持った企業と自負している。再生可能エネルギーの普及のために何か仕掛けなければならないと考えており、活動の立ち上げを支援したいと参画した」と背景を語る。
将来的には再生可能エネルギーにとどまらず、水素のようなグリーン燃料や省エネルギーに貢献する製品、二酸化炭素の回収/貯留などのデジタル認証にも取り組んでいく。「再生可能エネルギーの利用を認証までもっていくことで、初めてグリーン価値を価格転嫁できるようになる。カーボンニュートラルを投資負担として考えるのではなく、商材のグリーン価値を引き立て、より付加価値を付けられる“グリーンプレミアム”を掲げていくことが、グリーン投資をサステナブルにしてくためには大事だ」と語る。
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