いまさら聞けない「スコープ3」:5分で読める簡単解説(1/2 ページ)
現在、製造業をはじめとする産業界ではCO2などGHG排出のカーボンニュートラル化を目指す取り組みが急加速しています。その中で急務とされるのがGHGプロトコルにおける「スコープ3」の排出量削減です。スコープ3とは何なのか、簡単に分かりやすく説明します。
スコープ3(Scope3)とは
現在、製造業をはじめとする産業界ではCO2などGHG(温室効果ガス)排出を実質的にゼロにするカーボンニュートラルを目指した取り組みが急加速しています。その中で多くの企業が課題として抱えているのがGHGプロトコルにおける「スコープ3」の排出量削減です。スコープ3とは何か、排出量を削減する上で何を行うべきか、簡単に分かりやすく説明します。
スコープ3の前に、GHGプロトコルを理解する
スコープ3について説明する前に、まずはGHGプロトコルを紹介する必要があるでしょう。GHGプロトコルはWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議:World Business Council for Sustainable Development)とWRI(世界資源研究所:World Resource Institute)を中心に、各国企業やNGO(非営利組織)、政府機関など多数のステークホルダーが協働する組織的集合体です。CO2などGHGの排出量算定、報告の枠組みを国際的基準として定めており、これらの基準は現在世界中で参照されています。
GHGプロトコルが持つ特徴の1つが、企業によるGHG排出量をサプライチェーン全体で捉える、「サプライチェーン排出量」の考え方を採用している点です。ここで算定対象となるのは、オフィスや工場で企業自らが排出したGHGだけではありません。原材料や部材の調達から、工場での製造、製品の輸配送、販売、顧客による製品使用、製品廃棄などに至るまで、製品ライフサイクルや事業活動におけるさまざまな場面でのGHG排出を算定範囲に含みます。
この考え方では、企業がGHG排出量削減に取り組む上で、自社内での削減努力を推進するだけでは不十分である、ということになります。取引先や輸配送業者、製品やサービスの提供先となる顧客まで巻き込んだ削減努力が求められているのです。このように企業間連携を促進することで、従来よりも広範囲で環境負荷低減の取り組みが可能になると考えられます。
スコープ3は主に15カテゴリーで構成
さて、GHGプロトコルではGHGの排出主体や排出フェーズに応じ、サプライチェーン排出量を「スコープ」という区分を用いて、「スコープ1」と「スコープ2」そしてスコープ3の3種類で分類しています。
スコープ1は工場における燃料の燃焼や製造プロセスの過程など、企業自らによる排出が該当します(直接排出)。スコープ2は国内外で他社から購入した電気、熱、蒸気などの使用に伴う排出が含まれます(間接排出)。そしてスコープ3では、スコープ1、2以外での、サプライチェーン上でのGHG排出量が対象となります(その他の間接排出)。
すぐに分かる通り、スコープ3の算定範囲は非常に幅広いものとなっています。具体的な内容を示すものとして、スコープ3には15個の排出カテゴリーが設けられています。自社購入に関わる排出量(上流)であるカテゴリー1〜8と、自社販売に関わる排出量(下流)であるカテゴリー9〜15で構成されています。これに加えて、企業が任意で設定できる「その他」のカテゴリーも存在します。
例えば、カテゴリー1は「購入した製品・サービス」の排出量が該当します。自社が購入した原材料や部品、部材などの製品やソフトウェアなど全てのサービス製品における、資源調達から製造段階までの排出量全てが算定対象となります。また、カテゴリー11は「販売した製品の使用」となっています。エアコンや冷蔵庫など家電製品使用時における排出量の他、衣料製品であれば洗濯や乾燥時、食品製品であれば調理や冷蔵/冷凍に伴う排出量も含めて算定します※1。
※1:環境省と経済産業省が2022年3月に発行した「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(ver.2.4)」を参照。
この他にも「輸送、配送」「事業から出る廃棄物」「出張」「雇用者の通勤」などさまざまなカテゴリーが存在します。
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