FCAとPSAのステランティスも電動化加速、フレーム車もEV化:自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)
さて、今週も自動車業界は電動化に関するニュースが目立ちました。FCAとグループPSAが合併して発足したStellantis(ステランティス)が、電動化戦略と中期的な目標を発表しました。
この販売比率の達成に向けて、2025年までに電動化と関連するソフトウェアの開発に300億ユーロ(3兆9000億円)を投資し、ステランティス傘下の14ブランド全てでEVを投入します。EV専用プラットフォームを4種類用意し、全てのブランドと車両セグメントをカバーする考えです。
EV専用プラットフォームは、走行距離500kmの小型車向け、同700kmの中型車向け、同800kmの大型車向け、そして同じく走行距離800kmのフレーム車向けを開発。FF(前輪駆動)、FR(後輪駆動)、AWD(全輪駆動)の全てに対応させます。また、2021年末までに中型バンタイプの燃料電池車(FCV)を投入します。2026年までに、電動車の保有コストをエンジン車と同等にするという目標も掲げました。
電動化のカギとなる駆動用バッテリーは欧州と北米の5拠点で生産し、2030年までに年間260GWh分を調達します。また、欧州と北米のリチウム地熱塩水加工会社2社と持続的な調達の保証で覚書を交わしました。バッテリーは高密度かつ高エネルギーのタイプと、ニッケルフリー・コバルトフリーのタイプの2種類を用意します。2024年までにこの2種類のバッテリーを開発し、2026年には全固体電池を量産する計画です。
FCAとグループPSAの統合によって、バッテリーの調達コスト削減や物流・製造コストの最適化が進められ、シナジー効果は年間50億ユーロ(約6500億円)に上ると試算しています。バッテリーのコストは、2020〜2024年で4割削減し、その後2030年までにさらに2割削減するとしています。バッテリーの再利用やリサイクルにも取り組みます。また、EV専用プラットフォームによって、年産200万台規模のスケールメリットが生まれるとしています。
「脱エンジン義務化」の足音?
世界販売の上位を占める自動車メーカーが着々と電動化戦略を発表していますね。脱エンジンとその時期を明言した企業も、そうでない企業もいます。
- 直近で発表された各社の電動化戦略
- トヨタは2030年の電動車販売を550万台から800万台に、HEVとPHEVはEV走行がカギ
- 日産の新型EV「アリア」、2021年冬から日本向け限定仕様車で販売スタート
- 日産はe-POWERの燃費を25%改善へ、発電用エンジンの熱効率50%で実現
- 「ホンダはチャレンジングな目標にこそ奮い立つ」、2040年に四輪はEVとFCVのみに
- EV比率25%へ、マツダが2025年までに3車種、独自開発の専用プラットフォームも
- ルノーがHEVとPHEVのラインアップ拡充、新型「カングー」も電動化
- ボルボが2030年までに全車EVに、内燃機関やHVは吉利汽車との新会社に移管
- ジャガーは2025年からEVブランドに、ランドローバーもEVやFCVで電動化推進
これに対し、カナダ政府は乗用車とピックアップトラックの新車販売を2035年までにゼロエミッション車のみに義務化すると発表しました。以前は2040年にゼロエミッション車100%としていましたが、前倒しした格好です。2021年7月14日には、「2035年に排出削減100%を義務化」とする提案が欧州委員会から公開されるという報道もあります。
あと10年ちょっとで、新車の選択肢が劇的に変わりそうです。10年後、15年後に自分がどんなクルマに乗っているんだろう、と考えてしまいますね。
今週はこんな記事を公開しました
- 今こそ知りたい電池のあれこれ
- モビリティサービス
- SIMULIA Community Virtual Conference Japan 2021
- 製造マネジメントニュース
- 燃料電池車
- 車載ソフトウェア
- 工場ニュース
- 組み込み開発ニュース
- 知財ニュース
- 編集後記
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- リチウムイオン電池の性能を左右する「活物質」とは?【正極編】
今回から数回にわたり、リチウムイオン電池に用いられる代表的な材料にはどんなものがあり、どのようにして電池の特性を左右するのか、解説していきたいと思います。 - トヨタは2030年の電動車販売を550万台から800万台に、HEVとPHEVはEV走行がカギ
トヨタ自動車は2021年5月12日、オンラインで会見を開き、2020年度(2021年3月期)の通期決算と2021年度(2022年3月期)の業績見通しを発表した。 - 日産の新型EV「アリア」、2021年冬から日本向け限定仕様車で販売スタート
日産自動車は2021年6月4日、SUVタイプの電気自動車(EV)「アリア」の日本専用限定仕様車を発表した。また、アリアの予約サイトを同日に開設し、オンラインでの予約注文の受付も開始した。 - EV比率25%へ、マツダが2025年までに3車種、独自開発の専用プラットフォームも
マツダは2021年6月17日、オンラインで説明会を開き、2030年にEV(電気自動車)の販売比率を25%とするための電動化戦略を発表した。 - 日産はe-POWERの燃費を25%改善へ、発電用エンジンの熱効率50%で実現
日産自動車は2021年2月26日、シリーズハイブリッドシステム「e-POWER」の次世代版向けに、発電専用エンジンで熱効率50%を実現する技術を開発したと発表した。リーンバーンを実現する新しい燃焼コンセプトの採用や排熱回収、エンジンを完全に定点運転とすることが可能なバッテリー技術を総合的に組み合わせることにより、熱効率50%を達成する。 - 「ホンダはチャレンジングな目標にこそ奮い立つ」、2040年に四輪はEVとFCVのみに
ホンダは2021年4月23日、新社長の三部敏宏氏の就任会見を開き、2040年に四輪車に占める電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)の販売比率をグローバルで100%とする目標を発表した。日系自動車メーカーとしては初めて“脱エンジン”を表明した。2035年までに日米中の3市場でEVとFCVの比率を80%に引き上げる。これまでの目標よりもゼロエミッション車の販売拡大を前倒しする。