「国産マスク」にかつてない注目、COVID-19による混乱の影で進むスマート工場化:FA 年間ランキング2020(2/2 ページ)
2020年に公開したMONOist FAフォーラムの記事をランキング形式で振り返ります。公開記事の1年間分のデータを集計した上位記事とそこから見えるFA業界の状況について紹介します。2020年のランキングは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を色濃く受けたものとなりました。
COVID-19に関連するサプライチェーンの混乱
「マスク生産」と並びCOVID-19関連でサプライチェーンの混乱についての話題が多くの関心を集めました。第3位には「新型コロナで日産ホンダスズキも国内工場を停止、ソニーとルネサスは海外で影響」、第5位には「トヨタ高岡工場が新型コロナの二次感染でライン停止、富士通小山工場でも感染者」、第6位には「IHIといすゞ、村田製作所の工場従業員が新型コロナに感染、操業停止が相次ぐ」と、COVID-19による生産停止についての話題が入っています。
感染拡大直後の混乱期は乗り越えたとはいえ、COVID-19は工場での働き方やサプライチェーンの在り方にさまざまな問題提起を行ったといえます。1つは「人手作業の低減」です。製造現場での人手作業はゼロにすることは現実的ではありませんが、COVID-19で密集した環境での労働が難しくなる中、人手作業を低減し、安全な職場環境を作ることがより強く求められるようになりました。そのため、自動化やロボット活用が従来以上に高まることが期待されています。
もう1つ、要求が高まっているのが「柔軟性」です。記事でも取り上げている通り、感染防止策を十分にとっていても、工場でCOVID-19感染者が出る可能性はあります。その場合、状況によっては、生産ラインを止める必要があったり、工場を閉鎖しなければならない場合があったりします。つまり、計画通りに進まないリスクが常にある状況になっているといえるのです。こうした不確実性に全て計画的に準備をすることは不可能であるため、状況に合わせて柔軟に対応していくということが求められています。また、COVID-19で世間の状況が変化したために、需要が急増もしくは急減した製品なども存在します。先述したマスクもそうですが、こうした変動にも柔軟に対応できる製造現場が従来以上に求められているといえるでしょう。
高まるスマートファクトリー化への期待
さて、COVID-19関連で染まったランキングでしたが、COVID-19関連以外の話題も見ていきます。7位にはエッジコンピューティングについて解説した「いまさら聞けないエッジコンピューティング」が入りました。IoT(モノのインターネット)などにより、製造現場などから集めたデータを容易に収集できるようになりました。しかし、一方で多くのデータを扱えるようになるからこそ、データの発生源に近いところで一次処理をする必要が出てきています。製造現場でのデータ活用が加速する中で、エッジコンピューティングの活用は今後も広がると期待されています。
9位には、オムロンの執行役員副社長でインダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 社長である宮永裕氏へのインタビュー記事「“標高10mのIoT”を『新たなモノづくりの土台』へ、変革進めるオムロンの挑戦」が入りました。コロナ禍におけるFA業界の見通しと共に、同社が進める「i-Automation!」やモノづくり技術をサービスとして提供する「i-BELT」などの動向が紹介されています。
また10位には、第4次産業革命をリードする世界で最も先進的な工場「ライトハウス(Lighthouse、灯台=指針)」として日立製作所の大みか事業所などが選ばれた「世界で最も先進的な工場として日本から初認定、日立大みか事業所など3工場」が入っています。この「ライトハウス」に選ばれた日立製作所 大みか事業所の取り組みを紹介した「変種変量生産で効率50%向上、“世界的先進工場”は何を行っているのか」も13位に入りました。また、12位にはスマート工場化の課題について取り上げた連載記事の1回目である「スマートファクトリー化がなぜこれほど難しいのか、その整理の第一歩」が入っており、スマート工場化についての関心は引き続き高いことが伺えました。
COVID-19関連を除いた2020年の総合トップは?
さて、ここまで2020年公開記事に限定してランキングを見てきましたが、MONOist FAフォーラムの過去の記事も含めた全ての記事の中で2020年に最も読まれた記事は何だったのでしょうか。ここではあえて、COVID-19関連のニュースを除いたランキングとし、傾向を示したいと思います。
COVID-19関連の話題を除いた中で最も多く読まれた記事は「半導体露光機で日系メーカーはなぜASMLに敗れたのか」でした(COVID-19関連の話題を含めた場合は3位)。この記事は2018年公開記事の中で年間1位となった記事なのですが、半導体業界の再編などが進む中で、2019年も総合トップとなり2020年も引き続きよく読まれています。
その次に多く読まれたのは「いまさら聞けない EtherCAT入門」」となっています(COVID-19関連の話題を含めた場合は6位)。こちらは2016年、2017年、2018年と3年連続で年間トップとなった記事です。2019年は2位でしたが、2020年も継続的に人気となっています。この「いまさら聞けないEtherCAT入門」以外にも、接続規格についての「いまさら聞けない」とした基礎知識を紹介した記事はよく読まれています。また、スマートファクトリー系の課題解決記事が上位を占めたということが特徴的だといえます。2020年総合ランキングトップ10(COVID-19関連除く)は以下のようになります。
MONOistFA2020年記事総合ランキングトップ10(COVID-19関連記事を除く)
さて、COVID-19の影響を強く受けた2020年ですが、この流れはFA業界にとっては自動化を加速させる大きな波となりつつあります。混乱が続く中でも着実にスマートファクトリー化への関心は高まっており、それが記事ランキングにも反映されていると感じています。2021年も先の読めない状況が予想されますが、MONOistでは2021年も引き続き、スマートファクトリー化を含む、柔軟でしなやかな強さを持った製造現場に向けた情報発信を進めていきます。引き続きよろしくお願いいたします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- アイリスオーヤマがマスクの国内生産開始、月6000万枚の増産で1億4000万枚体制へ
アイリスオーヤマは2020年3月31日、不織布マスクの国内生産を開始すると発表した。以前から行う中国での生産に加え、宮城県角田市の角田工場を改修しマスク生産を行う。 - 新型コロナ対策でシャープがマスク生産開始、増産10社の合計は月4500万枚以上に
シャープは2020年3月24日、三重県多気郡多気町の同社工場において不織布マスクの生産を開始したと発表した。シャープも含め、日本政府のマスク増産要請に応じた増産10社の生産増加分は月4500万枚以上になる見込みだ。 - 新型コロナで日産ホンダスズキも国内工場を停止、ソニーとルネサスは海外で影響
新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響が国内製造業に広がっている。既にトヨタ自動車とマツダに続いて、日産自動車、三菱自動車、ホンダ、スズキも国内工場の操業を停止する。また、ソニーやルネサス エレクトロニクスも海外生産を中心に影響が出始めている。 - 変種変量生産で効率50%向上、“世界的先進工場”は何を行っているのか
2020年1月にWEFによる「第4次産業革命を主導する世界的先進工場(ライトハウス)」に選ばれた日立製作所の大みか事業所。世界の中でも先進的な取り組みを進めるスマートファクトリーとして評価された工場となったわけだが、具体的にはどういう取り組みを行っているのだろうか。同工場の取り組みを紹介する。 - スマートファクトリー化がなぜこれほど難しいのか、その整理の第一歩
インダストリー4.0やスマートファクトリー化が注目されてから既に5年以上が経過しています。積極的な取り組みを進める製造業がさまざまな実績を残していっているのにかかわらず、取り組みの意欲がすっかり下がってしまった企業も多く存在し2極化が進んでいるように感じています。そこであらためてスマートファクトリーについての考え方を整理し、分かりやすく紹介する。 - いまさら聞けない「エッジコンピューティング」
IoT活用やCPS進展の中で、あらためて脚光を浴びている「エッジコンピューティング」。このエッジコンピューティングはどういうことで、製造業にとってどういう意味があるのかを5分で分かるように簡単に分かりやすく説明します。