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ソニーから譲り受けた村田のリチウムイオン電池、「燃えない」を武器に黒字化急ぐメイドインジャパンの現場力(29)(1/3 ページ)

村田製作所は2019年8月28日、リチウムイオン電池の組み立て工程を担う東北村田製作所の郡山事業所を報道向けに公開した。

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 村田製作所は2019年8月28日、リチウムイオン電池の組み立て工程を担う東北村田製作所の郡山事業所を報道向けに公開した。


くぎ刺し試験の様子。材料の特徴により発火しない。高い安全性を持つ(クリックして拡大)

 東北村田製作所の前身はソニーエナジー・デバイスだ。村田製作所は2017年にソニーから電池事業を譲り受けた。村田製作所の電源技術と旧ソニーエナジー・デバイスのバッテリー技術のシナジーも生まれ、DC-DCコンバーターやバッテリーマネジメントシステムを一体化した家庭向け定置用蓄電システムを2018年2月に発表。住宅用だけでなく、工場の瞬時電圧低下対策や学校、消防署などの非常用電源、オフグリッド向けまで、幅広い用途に向けて提供する。

 村田製作所はソニーから譲り受けたリチウムイオン電池をビジネスとしてどう育てるのか。目標となるのは、2021年度中に電池事業を黒字化することだ。村田製作所 モジュール事業本部 エナジーシステム統括部 統括部長の高野康浩氏は「電池は産業のコメ。村田製作所のポートフォリオの中核を担えるように育てていく」と語る。

くぎを刺しても燃えない

 リチウムイオン電池の電極材料には幾つか種類があり、材料によって性質や用途が異なる。例えばコバルト系は高動作電圧が特徴でスマートフォンやPCに使われ、ニッケル系(NCA)は高エネルギー密度で車載用に使われる。村田製作所でもさまざまな材料のリチウムイオン電池を手掛けるが、蓄電システム向けで注力しているのが正極材にオリビン型リン酸鉄を使った円筒形リチウムイオン電池「FORTELION(フォルテリオン)」だ。


リチウムイオン電池の種類(クリックして拡大) 出典:村田製作所

 オリビン型リン酸鉄系は動作電圧が低く、エネルギー密度も低い。他の材料のリチウムイオン電池と比べて重くなるという欠点もある。しかし、熱安定性が高いことによる安全性、15年以上の長期間の保存特性、1万4000サイクルで70%のサイクル特性、レアメタルフリーといったメリットがある。1時間で90%以上の急速充電も可能だ。長期間使用し、1日に何度か充放電する蓄電システムに向く性質を持っている。

 フォルテリオンの安全性については、ソニー時代の2016年に消防認定を取得した。蓄電システムが災害時に発火もしくは爆発を起こすと二次災害につながり大変危険である。フォルテリオンは、地震や火事、洪水などの環境に蓄電システムが置かれたことを想定した試験で発火や爆発を防げることを確認。消防用設備などの非常電源として消防法上の技術水準に適合していることが認められた。「リチウムイオン電池としては初」(ソニー)だという。UL1973などの安全認証も取得した。

 安全性試験では、満充電状態で強制的に内部短絡を起こす他、同じく満充電でのバーナーでの加熱や浸水、圧壊などを行う。報道向けに実演したくぎ刺し試験では、他の素材のリチウムイオン電池セルは急激に温度が300℃以上まで上昇してすぐに発火するのに対し、フォルテリオンは過充電時でもリンが酸素を保持して構造が安定するため発火せず、約120℃をピークに短時間で温度が下降した。

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