あなたが品質管理で果たすべき役割は何か:実践! IE:現場視点の品質管理(3)(5/5 ページ)
製造現場で実施する製品管理を中心とした品質管理の基本を解説する。組織における品質管理の在り方から先人の教訓まで、筆者の経験とノウハウを紹介。
3.4 先輩からの教え「人間以上の品物はできない」
いくら自働化が進んでも、ボタン1つを押せば製品が出来上がるというようにはなりません。材料を削ったり部品を組み立てたりしながら、多数の人々の手をへて製品が完成します。
それゆえに、部品や製品の検査は非常に厳格に行う必要があるのですが、いくら検査を厳格にしても、手を抜こうと思えば抜けるところが出てきます。手を抜いたからといって、それらは必ずしも検査で発見できるとは限りません。
例えば、ピストンの表面荒さは、先輩が多年の経験によって、部品の材質、精度、作業方法などで決定しているわけですから、当然のことながら、単に検査に合格することだけを考えて決めているわけではありません。検査は限られた時間で行われますから、十年後、三十年後に故障が起こるかどうかは、いくら検査をしても分かるものではありません。
ですから、検査で発見されるか否かではなく、手抜きをすることなく決められたピストンの表面荒さにキッチリと作業をして仕上げることが重要になってくるわけです。
どうすれば製品の品質が良くなるかを突き詰めていくと、良い製品を作るカギを握るものは必ずしも良い技術だけではないということに気付かされます。結局は、人間の問題に突き当たります。いろいろとやってみたり考えたりした結果、「人間以上の品物はできない」ということが分かってきます。
良い人間が良い製品を作る。従って、良い製品を作るには、まず良い人間を作らねばなりません。しかも、製品の評価は、これを作る何百人という人たちの中の一番悪い人によって決定付けられます。
1人が手を抜くと、他の何百人もの製品の製造に関わった人たちが、どんなに良い仕事をしていても、いつかは故障が発生します。
誰か1人が、ただ一カ所の不完全な仕事をしていると、いつかは故障を起こし、自社製品はダメだといわれます。
製品の評価を、多数の従業員の中のただ1人の最悪の人によって左右してしまいます。
良い製品を作る秘訣には、全従業員の倫理観のレベルを向上させることと、最悪の人の倫理観を向上させることとの両側面があります。道義の根本は良心です。良心のある人は自己の仕事に責任を持ちます。この良心から発せられた責任感こそが良い製品を作り出す根本です。製品を作るのは機械ではなく人間であるということをハッキリと認識すべきです。
――今でも心に刻みつけている先輩の教えより
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品質を管理して、顧客に対して品質保証をするのが品質管理の目的です。新製品の企画時点から製品の信頼性を含めた品質を作り込み、次に工程管理をシッカリ行い、さらに、必要があれば検査を行うという一連の“総合的品質管理(TQC:Total Quality Control)”の上に品質保証を行っていくことになります。
この保証体系を効果的に運用していくためには、製造現場での品質管理は、徹底した5M(人:Man、機械・装置:Machine、原材料・外注:Material、方法・技術:Method、測定・試験:Measurement)の管理(Management)が重要です。
5Mの全ての場合に統計的方法を活用していくことが“統計的品質管理(SQC:Statistical Quality Control)”です。そこで、次回は、製造現場における品質管理で、最も大切となる5Mについて説明をしていきたいと思います。ご期待ください!
⇒前回(第2回)はこちら
⇒次回(第4回)はこちら
⇒連載「実践! IE:現場視点の品質管理」バックナンバー
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筆者紹介
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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