あなたが品質管理で果たすべき役割は何か:実践! IE:現場視点の品質管理(3)(4/5 ページ)
製造現場で実施する製品管理を中心とした品質管理の基本を解説する。組織における品質管理の在り方から先人の教訓まで、筆者の経験とノウハウを紹介。
3.3 各職務担当者の果たすべき役割
今日の品質問題は、個々の製品の良しあしは当然として、製品が期待されている機能に対してどの程度の信頼性が確保されているかも問われています(「現場視点の品質管理(1)・(2)」参照)。言い換えれば、品質保証の求められる範囲が拡張され、機能と信頼性を含む総合的な製品責任が重要視されてきているといえます。企業トップから作業者に至るまでの全員参加の品質管理体系である“総合的品質管理(TQC:Total Quality Control)”が取り入れられるようになった背景には、これらの品質を実現する必要に迫られたことがあります。これらの品質管理を「広義の品質管理活動」ともいいます。
“総合的品質管理(TQC)”は、企業の全員が参加して行う品質管理活動ですから、改善活動と維持活動を常に繰り返していく永続的な活動でなければなりません。実際に、“総合的品質管理(TQC)”を推進していく場合、次の考慮すべき項目が挙げられます。
- トップ自らが、“総合的品質管理(TQC)!”推進の方向性を明確に示す
- 方針、目標、計画を明示して展開する
- 方針を実行し、目標を達成し、人材を育成する
- 自社に適合したQC手法の開発、活用を図る
- 標準化の方針と実施事項を定める
- 推進状況と結果の監査を実施する
以上の項目を、さらに具体的に各職務担当者別に主な項目を記述すると、以下の通りとなります。これらの項目について、詳細に役割や実施内容が実行される体制を確立し、実践されて、初めて“総合的品質管理(TQC)”の推進が実行されているといえます。これらを具体的に実践していくとなると、相当の努力を必要としますが、大変だからこそ、これを乗り越えることによって他社との差別化を成し遂げていけるのです。
(1)社長もしくは企業トップの相当職
- 工場の品質管理推進の最高責任者となり、各部門の品質管理活動を統括する
- 工場の品質管理方針を立案し、それを効果的に運用するための「工場品質管理規定」を制定する
- 効果的な品質管理組織を編成して、それを速やかに設置する
(2) 経営トップ付きの品質管理専任スタッフ
経営者層の強いリーダーシップで推進する場合、最初から社長のスタッフあるいは推進室を設ける方がよい
- 品質管理方針を工場内の全般に徹底させ、品質管理の企画統制を行う
- 工場の品質管理推進の実施計画を立案し、これらの実施に必要な処置を行う
- 定期的に、各部門の品質管理の推進状況を監査し、工場内の実施状況の確認と効果の評価を行い、その結果を社長に報告する
- 品質管理教育計画を作成し、従業員に必要な品質管理教育を継続的に実施していく。また、品質管理に関する新しい手法や情報を吸収し、これらの普及を図る
- 各部門の品質管理活動の技術的援助を行う
(3)部長、課長
- 各部門の部長・課長は、担当部門の品質管理責任者となり、工場の品質管理方針を部下に徹底させる
- 工場の品質管理方針に基づき、これを実行するために必要な諸規定や規格、標準などを制定する
- 部門(部・課)内の品質管理の実施計画を立案し、それを推進する
- 品質情報を常に把握し、その処理や対策を適切に行わせ、その結果をチェックし重要な品質問題は、機を失せず上長に報告する(徹底した“PDCA”と“3現主義”の実行)
- 品質管理の実施状況を確認し、是正、指導を行い、効果の評価を行う
- 機械設備、器具、治工具などを常に整備させ、その改善、新設について計画と実施をする
- 部門内の各担当者間や他部門との連絡、協調を図る
- 品質管理推進に必要とする教育計画を立案しこれを実施する
- 定期的に「品質管理推進会議」を開催して、実績、およびアクション事項の検討、不良原因の検討などを関係者と協議する
(4)係長、主任
- 必要な規格の整備、管理項目、その方法を決定し、標準化に努める
- 担当職場に関する一切の情報を把握し、これを解析して必要な処置を行う。その経緯や結果を課長に報告すると共に、必要事項を関係者に連絡する
- 他課責任の情報は、該当課へ連絡し、必要なときはその対策を確認する
- 対策の結果をフォローし、効果を評価して管理の定着を確認するなど、部下の実施状況を監督・指導する
- 各グループ(係など)相互の協調を図る
- 常に作業改善、能率向上に関する検討を行う
- 設備、治工具類の精度の維持・向上および標準化を推進する
- 計画に基づいて部下の教育を行う
(5)現場監督者(職長、リーダーなど)
- 作業者に標準を徹底させる。
- 図面や仕様書の内容をよく確認し、作業者に納得のいく説明をしてから作業指示を行う
- 作業者の作業の仕方、製品のでき映え、製品品質のバラツキなどを常にチェックして、適切な処置を行う
- 職場巡回や作業者からの申告などにより常に品質情報を把握し、これを記録しておく。また、これらの品質情報は、常に係長(主任)に報告し、その処置、対策について作業者に必要な指示を与える
- 作業の標準化を常に検討し、標準化の案を作成して係長(主任)に提案する
- 作業改善や能率向上について常に検討する
- 設備、治工具類の保全に努める
- 作業者を教育して品質意識の高揚に努める
(6)作業者
- 必要な標準書類を完全に理解し、忠実にその通りに履行する
- 作業を始める前にその作業を再確認し、全ての疑問をなくしてから作業に着手する
- 標準書の内容に不都合を発見したときは、直ちに上長に連絡する。自分勝手な変更や判断を行ってはならない
- 自分の担当作業の改善や能率向上について上長に提案する。
- 機械設備、治工具類、または作業の結果に異常を生じたときは、作業を停止して点検すると共に上長に申し出る
“総合的品質管理(TQC)”の推進は、組織がいままでの延長上の機能や役割では、決して成功することはありません。つまり、従来通りの組織では、真の技術の進歩や合理化は望めませんし、それを推進していくこともできません。“総合的品質管理(TQC)”は、全部門が全員参加で総合的に実施していくことですから、
- 経営者、トップがポリシーをハッキリと示すこと
- 組織の合理化、責任と権限をハッキリと示すこと。特に、権限の委譲範囲と、その管理方法を十分に研究すること
- 組織は企業運営のためにあることを再認識し、シッカリとした協力体制が取れるようにすること
- 技術部門と事務部門間などといった部門間の人事交流を積極的に頻繁に行うこと
などが、品質管理活動を成功に導くためには大切なことです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.