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“かんばん方式”にまつわる誤解・曲解・勘違いこうすればうまくいく生産計画(6)(1/5 ページ)

今日の製造業が抱えている根本問題は「大量・見込み生産の体制を残したまま、多品種少量の受注生産に移行しようとしている」ことにある。生産計画を困難にするさまざまな要因を乗り越え、より良い生産計画を実現する方法を検証してみよう。

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プリウスの「見込み違い」

 数年前、車を買い替えようと思い、いろいろなディーラーを回ったことがある。ちょうどプリウスの新型モデルが出た直後だったので、トヨタの販売店を訪れて見せてもらった。試乗してみるとなかなか良い。値段を聞き、ローンの説明を聞き、注文しようかな、と内心思って納期を尋ねたら、「あいにく6カ月先になります」(!)という答えが返ってきた。期待以上のヒット商品で、生産が追い付かないらしい。だが、私は長らく乗っていた車の車検が切れる少し前だった。これでは間に合わぬ。うーん、トヨタさん、生産計画を見誤ったな……。結局、購入は見送ることにした。

 当時トヨタは毎年最高益を更新しているさなかだった。が、このとき同社は小口の顧客を1人逃し、販売機会損失を出したわけだ。そして、その原因は生産計画にあった。そう、トヨタには「生産計画」があるのである。

 トヨタでは生産計画と販売計画は1つのものである。車両台数ベースでは同じ数字で生産側も販売側も動いている。逆にいうと、販売計画が立たないと、生産計画も成り立たない。昨年(2008年)秋以来のトヨタの苦境は、まさにこの事情を象徴している。

 トヨタに生産計画がある、というと、「製造業だから当然じゃないか」と思う人がいる一方で、「え、あの会社はかんばん方式で動いているんじゃなかったの!?」と驚く人も一定数出てくる。かんばん方式は計画や予測などに頼らず、“売れた分だけ作る”のだから、生産計画なんてないはずだが、と。今回の記事は、何よりそうした疑問を持たれた方のために書こうと思う。

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