前述した内容を踏まえ、耐熱鋼とはどのような鋼であるかを説明します。日本産業規格(JIS)によると、耐熱鋼は「高温における各種環境で耐酸化性、耐高温腐食性、または高温強度を保持する合金鋼」と定義されています。つまり、前述した高温酸化、高温腐食、熱疲労、クリープ変形などが普通の鋼に比べて起こりづらく、高温環境でも耐えられるように製造された鋼となります。
化学成分的には、耐熱鋼は「クロム(Cr)が多量に添加された合金鋼」となります。Crは高温環境下における鋼の耐酸化性と耐食性を向上させ、さらに強度の低下を抑制する効果のある合金元素だからです。前回、「ステンレス鋼」はCr含有率を10.5%以上とし、耐食性を高めた合金鋼として解説しました。ステンレス鋼は耐熱鋼に必要な材料特性が備わっているため、耐熱鋼としても使用されています。
よって耐熱鋼における主力の合金元素はCrであり、用途や目的に応じてその他の合金元素が添加されています。高温強度特性の向上には「固溶強化」や「析出強化」が有効であるため、固溶強化元素であるタングステン(W)やモリブデン(Mo)、また析出強化元素であるニオブ(Nb)やバナジウム(V)などが添加される場合があります。
なお、耐熱鋼は一般的に合金元素の合計値が50mass%未満のものを言いますが、それより多いもの(例えばニッケル基のもの)は「耐熱合金」と呼ばれます。
耐熱鋼の主な使用先としては自動車、暖房器具、焼却炉、化学プラント、火力発電プラント、原子力発電プラントなどが挙げられます。耐熱鋼は500℃や700℃などの環境下で使用されることとなりますが、鋼種によっては1000℃を超える高温環境下で使用されることもあります。
自動車ではエンジンバルブや排気装置(エキゾーストマニホールド、EGR、触媒コンバーター、マフラーなど)に耐熱鋼が使用されています。これらは腐食性ガスを含む高温の排気ガスにさらされることから耐高温酸化性、耐高温腐食性、熱疲労特性に優れた耐熱鋼が使用されています。
化学プラントでは、石油精製装置、水素製造装置、エチレン製造装置などに耐熱鋼が使用されています。これらの装置の内部は500〜1000℃の高温域となり、材料は高温腐食をもたらす流体にさらされることから、耐高温腐食性に優れた耐熱鋼が使用されています。
近年のごみ処理施設には、ごみ焼却時の廃熱を利用して発電を行う設備が備えられています。その設備に使用されるボイラー配管は溶融塩と高温ガスにさらされるため、耐高温腐食性に優れた耐熱鋼が使用されています。
火力発電プラントでは、主要な設備であるボイラー配管や蒸気タービンなどに耐熱鋼が使用されています。これらの機器は高温/高圧の蒸気にさらされることとなり、10年間(10万時間)以上の耐用年数が求められるため、耐高温酸化性、耐高温腐食性、クリープ特性に優れた耐熱鋼が使用されています。
このように耐熱鋼はさまざまな高温機器に使用され、過酷な条件にさらされながら、安全に機器が稼働し続けられるようにサポートしています。
耐熱鋼は「耐熱鋼棒(線材)」または「耐熱鋼板(鋼帯)」として日本産業規格に規格化されています。多くの品種が規定されており、材料記号は「SUH」または「SUS-HR」となっています。SUS-HRの品種はステンレス鋼を転用した品種となります。
品種は金属組織の違いにより、「フェライト系耐熱鋼」「マルテンサイト系耐熱鋼」「オーステナイト系耐熱鋼」「析出硬化系耐熱鋼」の4種に分類されます。強度レベル、高温腐食特性、耐久温度などがそれぞれ異なります。
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