次に、具体的に第一次所得収支の変化を見てみましょう。図2は日本の第一次所得の収支です。
第一次所得は受け取り側も支払側も増加傾向ですが、受け取り側が大きく超過しており、収支がプラスで拡大傾向となっています。
その中でも、証券投資収益と直接投資収益が大きな存在感となっていることが分かりますね。証券投資収益は支払い側も拡大が続いており、受け取りから支払いを差し引いた正味(ネット)では2000年代から横ばい傾向です。
証券投資は、海外企業への株式投資などをイメージすれば分かりやすいですが、日本から海外企業への投資も、海外から日本企業への投資も増えていて、正味ではプラスですがその水準が一定範囲のバランスで推移していることになります。
一方で、直接投資は受け取り側が大きく超過していて、ネットでも増加傾向が強く、2020年代では証券投資収益を大きく上回るようになっているのです。
また、雇用者報酬やその他第一次所得は微小で、その他投資収益は受け取りと支払いが同程度です。
ここで、それぞれの項目について、表2でどのような意味なのかを確認してみましょう。
直接投資とは、海外工場による現地生産など、現地子会社(現地法人)での対外活動への出資となります。株価の値上がりや配当金を期待する証券投資とは分けて扱われます。
直接投資の対象は「議決権の割合が10%以上の出資関係がある親子会社間の投資および一定以上の間接的な出資関係がある企業」です。この直接投資関係にある企業からのリターン(出資所得や利子所得)が直接投資収益として計上されます。
つまり、直接投資による日本としての所得とは、海外子会社が海外で行う事業そのものではなく、その結果として得られる利益の分配などの権利分ということになります。
また、現地法人の生産活動に伴う部品や生産設備を国内から供給すれば財貨の輸出となりますし、現地生産によるライセンス料はサービスの輸出となりますので、貿易・サービス収支に計上されることになります。直接投資と貿易も相互に関係している面がありますね。
直接投資収益についてももう一段階詳細なデータも見てみましょう。図3は、日本の直接投資収益のみを抜き出したグラフです。海外子会社へ投資したリターンとして、どのような形でどれくらい日本に還流しているのかが分かるはずです。
直接投資収益は、出資所得のうち配当金/配分済支店収益、再投資収益と利子所得に分けられます。受け取り側が大きく超過していますが、その中でも配当金/配分済支店収益と再投資収益とが大きな比率を占めている状況ですね。利子所得は非常に小さな規模のようです。
それぞれの意味を表3にまとめました。
海外子会社の稼いだ利益の中で、実際に親会社に分配された分が配当金/配分済支店収益となり、直接投資収益の約半分となるわけです。逆にいえば、残り半分は再投資収益として海外子会社に留保され、実際には日本に還流するわけではないことになります。
その分だけ、親会社が海外子会社に持つ資産が増えるという扱いです。日本ではこのように、対外直接投資による収益が大きく超過しているのが特徴的で、この部分が経常収支を底上げしているわけです。
輸出よりも対外活動(対外直接投資)が優先して進んできた結果、日本へ還流する直接投資収益が拡大していることになります。ただし、その半分は現地企業に留保される分であることには注意が必要です。
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