2025年はAI技術がさらに進化し、製造現場向けのAIソリューションも数多く登場した。AIを活用することで、製造業の品質や人手不足の問題解決に貢献できるのか、2026年以降の動向を考察していく。
日本の製造業はここ数年でさまざまな品質不正が発覚しており、その対策として「組織風土改革」と「人を介さない仕組みの構築」の重要性が高まっている。2025年はAI(人工知能)技術が大きく進歩し、数々の新しいソリューションや製品が誕生した。同年後半からは「フィジカルAI」がトレンドワードとなり、世界的に見てもその動向に注目が集まっている。
AI技術をはじめとしたさまざまなソリューションは、モノづくりの現場にも大きな変革をもたらす可能性がある。例えば、属人的な業務をロボットに代替することで現場の作業者の負担を減らし、別の業務に時間を割けるようにするといった動きも少しずつ増えていくと考えられる。
属人的な業務の削減は製造ラインの透明性にも寄与することになり、人の手が介在しないことによって人為的ミスを抑制し、製造の品質を向上するとともに品質不正を起きにくくする環境の構築にもつなげられる。従来は知識のある一定の作業者しかできないような業務をロボットや機械に置き換えることで、工程のブラックボックスとなっていた部分が明らかになり、システムを活用した第三者の視点がある状態で管理することで、人による不正を抑制する状況を作り出せるようになる。
2025年の品質不正問題の関連で特徴的だったのは、自社が引き起こした事態に対する組織改革の取り組み内容を公開する動きが見られたことだ。三菱電機は2025年3月に社外向けの組織風土報告会「ME's Culture Day」を開催し、同社の組織改革内容を説明した。
同社で指摘されていた「上にものが言いづらい」「ミドルマネジメントの機能不全」「拠点単位の内向きで閉鎖的な組織風土」といった課題に対して、トップダウンとボトムアップの両面から組織改革を実施。社員間でコミュニケーションを取る際には役職ではなく「さん」付けで呼ぶ、1on1ミーティングの実施といった「心理的安全性」が確保される環境づくりに取り組んでいる。
月の生産ノルマに追われてしまい、現場で日々の業務に忙殺されている中でマイナスな要素を上司に進言したら何を言われてしまうのか分からない……といった心理的な不安要素が積み重なると、異常に気付いた際に事象を報告せずに隠すようになり、情報の隠匿につながってしまう。この結果、客先に製品を納入した後に問題が発覚して、重大な品質問題として自社の首を絞める結果になる。
このような状態を防ぐためにも、異常があった際にすぐに報告しやすい環境を構築し、重大な品質トラブルになる前にすぐに動くことができる環境を、企業風土として根付かせていくことが重要だといえる。
また、製造現場では外国籍の作業者も多く働いており、言語の壁によるコミュニケーション不足に課題を感じている企業も多くなっている。この課題を解決するため三菱電機は2025年10月、生産現場における外国籍従業員との円滑なコミュニケーションを実現するとともに、作業品質や安全性の向上などに貢献する「MelBridge(メルブリッジ) しゃべり描き翻訳」の開発を発表し、同年11月からは外販も開始している。
同製品はタブレット端末の画面を指でなぞった場所に話した言葉を文字として表示し、同時に翻訳内容も併せて確認できる「しゃべり描き機能」やボタンで日本語や他の言語を選択してチャット欄に表示させる「トランスクリプト機能」を搭載しているため、外国籍の作業者ともスムーズに会話ができる。さまざまな言語が飛び交う環境でも円滑なコミュニケーションを取れるツールが、今後の製造現場には必要になってくる可能性が高い。
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