日本郵船とJAXA、三菱重工が共同で検討を進める「ロケット発射&回収船」は、再使用型ロケットの洋上回収および将来的な洋上発射を視野に入れた構想で、陸上の射場に依存しない柔軟な宇宙輸送インフラの構築を想定している。
本構想では、回収船を司令船に搭載した状態で港から回収海域まで航行し、到着後、司令船を半沈させて回収船を発進する運用方式を想定している。安定性確保のために回収船自体は全幅80m近くを想定している。なお、関係者によると、これは複数ある設計案の中でも「最もビジュアルインパクトを重視した候補」だという。ちなみに、候補案には回収船と司令船が一体となって回収海域まで航行し、回収時は司令船が分離するという形態もあったという。
対応ロケットについては、回収機能においてはH3ロケットの1段目を想定している。既にSpaceXなどが先行する垂直着陸型ブースターの回収方式を参考に、同規模の機体が安全に着船できて機体を固定できる構造が求められている。一方、発射機能に関してはより小型のロケットを想定している。
回収船には極めて高度な性能と機能が要求される。第1に、H3ロケットの1段目のような大型ブースターが垂直に着船することを想定しているため、甲板には広大(説明会では着船エリアのサークルは直径40mを想定しているとの説明があった)かつ高強度な構造が求められる。着船の衝撃を吸収するための緩衝設計や、着船後に機体を自動的に固定する係留機構も装備しなければならない。
また、海上での精密な着船には、風や波による船体の揺れを極力抑制する機構が不可欠である。このため、回収船にはDPS(ダイナミックポジショニングシステム)などの高精度な位置保持機能が求められており、洋上でもロケットの進入角と着船地点を正確に維持できる制御能力が前提となる。
さらに、ロケット着船時には重心が高くなるため、復原性の確保も重要な課題となる。激しい波浪環境でも横揺れや縦揺れを最小限に抑える構造的工夫が必須で、船体の設計段階から高度なシミュレーションと検証が必要とされる。
加えて、ロケットの着船を支援するためには、気象観測や着船誘導のリアルタイム支援機能の実装も不可欠である。着船地点の風向風速や波高を正確に把握し、状況に応じて誘導修正を行う能力、さらには着船に失敗した場合を想定した緊急対応機構も必要になるとしている。
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