製造業の調達担当者は、新たなサプライヤーを探す際、依然として検索エンジンを最重要の情報源として活用している。2024年5月にテクノポートが実施したアンケートでは、「外注先を探す際によく使う手段」として検索エンジンを挙げた割合が54.1%に達し、過半数を占めた。
図2に示される1位と3位はいずれも「人に直接聞く」というオフラインの手段であるが、Webに限定した場合、検索エンジンの利用比率が圧倒的である。このため、製造業におけるWebマーケティングでは、検索結果で自社サイトを上位に表示させ、自然検索からの流入を増やす施策、すなわちSEOが長らく中核を成してきた。
しかし、生成AIを介したAI検索の急増により、検索経由の流入が仮に30%減少した場合、それに伴い検索由来で獲得していた新規リード(※リードとは、問い合わせや資料請求など、将来的に顧客となる可能性を持つ見込み客情報のこと)も同様の比率で減少する恐れがある。現行のWebマーケティング施策を見直すべきタイミングが到来したといえる。
筆者が考える、これからの製造業のWebマーケティングで重視すべき方向性は、以下の2点である。
まず、AIの引用対策について整理する。本稿ではAIの引用最適化を「AIO(AI Optimization/AI最適化)」と表記を統一するが、他にも「LLMO(Large Language Model Optimization/大規模言語モデル最適化)」や「GEO(Generative Engine Optimization/生成AI最適化)」と呼ばれることもある。
AIOの基本は、「読者の検索意図を満たすコンテンツ作成」であり、この点においては従来のSEOと本質的な違いはない。つまり、既存の制作手法を大幅に見直す必要はない。重要なのは、検索ニーズを精緻に分析し、それに対して的確かつ価値ある情報を継続的に提供し続けることである。
ただし、AIOならではの対策としては、次の2点を押さえておきたい。
AIボット(生成AIモデルの学習や回答生成を目的にWebサイトを巡回するロボットプログラム)に対して、サイトの目的や更新方針などを伝えるメタデータファイルのllms.txtは、サイトのルートディレクトリに配置する“AI向けのサイト説明書”といえる。内容には、サイトの目的、専門分野、更新頻度、引用時に重視してほしいポイントなどを記述する。
一方、クローラーやAIボットのアクセスを制御するファイルであるrobots.txtは、従来のクローラー制御に加え、AIボットへの指示出しという新しい役割を担う。重要コンテンツへの優先アクセス許可や、AIボットごとの制御に関する指定が可能だ。
こうしたファイルの整備が、テクニカルAIOである。
AI検索は、従来のキーワード列による検索よりも、文章形式の質問で行われる傾向が強い。そのため、記事末尾などに一問一答形式のQ&Aセクションを設け、読者の疑問を先回りして簡潔に回答しておくと、AIに引用されやすくなる。
現時点では、「SEOの大方針+上記の小改修」で十分だと考えられるが、AI技術の進化は極めて速い。今後も動向を注視しつつ、必要に応じて施策を柔軟にアップデートしていきたい。
次章では、本稿の本題である“高品質な技術コンテンツ制作”について解説する。
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