コスモの製油所デジタルプラント化 三現主義を解消する技術とは?素材/化学インタビュー(3/4 ページ)

» 2025年01月17日 07時00分 公開
[遠藤和宏MONOist]

APMシステムの役割

MONOist デジタルプラットフォームにおけるAPMシステムの役割は何でしょうか。

吉井氏 製油所には稼働年数が50年を超える装置が多数存在する。老朽化に伴うトラブルによる計画外停止が課題となっており、それを未然に防ぐ保全計画が重要となっている。これまで保全計画は紙やExcelなどのツールを基に人間が作成しており、保全には経験やスキルが大切とされてきた。

 そうした中で、当社の全製油所(千葉製油所、四日市製油所、堺製油所)で保全アプローチの効率化/精度の向上を目的にAPMシステムを2023年度に導入した。

 APMシステムは、世界標準の技術情報を活用して設備のリスク評価を行い、保全戦略を統括管理/高度化する。このシステムにより、定量的なリスク評価や、実効性が高い保全計画の立案/分析を行うことで、包括的に設備のパフォーマンスを把握できるようになり、不具合の未然防止につながっている。APMシステムによるデータ活用を開始して約1年で、稼働率1.3%相当の改善を図ることができ、製油所の高稼働への貢献が確認できた。

APMシステムのイメージ APMシステムのイメージ[クリックで拡大] 出所:コスモエネルギーホールディングス

 APMシステムの活用について一例を挙げると、製油所のコンプレッサーが破損した際にその損害を計算しリスクを評価して、カバーするための保全計画を立案/分析可能だ。その保全計画は、コンプレッサーを修理するケースと買い替えるケースのどちらが費用対効果に優れるかの判断材料にも使える。

バイタルセンサーやロボを用いた製油所の安全対策

MONOist 安全見守りくんの役割は何でしょうか。

コスモエネルギーグループ IT推進部 システム開発1グループ長の八谷鉄正氏 コスモエネルギーグループ IT推進部 システム開発1グループ長の八谷鉄正氏

八谷氏 コスモエネルギーグループでは製油所の安全対策でもデジタル化を進めており、現場作業員の熱中症や労災の予防、早期対応を目的に、安全見守りくんの導入を開始した。安全見守りくんは、専用のバイタルセンサーを対象者が装着することで位置やバイタルなどの情報を管理者がモニタリングできるシステムだ。

 同システムは、GPSでの位置情報の把握や重篤労災の検知、暑さ指数(WBGT)/心拍上昇に基づく熱中症予防機能により、現場作業員の異常を可視化する。現在は、四日市製油所で全製造部門の現場作業員が装着している。千葉製油所と堺製油所では導入に向け準備中で、2024年度下期から本運用の予定だ。

安全見守りくんのイメージ 安全見守りくんのイメージ[クリックで拡大] 出所:コスモエネルギーホールディングス

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