――イベントの際はありがとうございました。お香のいい香りがして、居心地の良い空間でした。富山からこのために東京に応援に駆け付けてくれた方などもいて、賑わっていましたね!
橋本さん ありがとうございました。バタバタしていて、後から知ったのですが、地元企業の方々や知り合いがお手伝いしてくださっていたようで、ありがたかったです。
――2023年高岡市で取材した際にも感じたのですが、高岡にはアットホームで親切な方が多いですよね。また高岡に行きたくなりました。それでは早速、今回の企画展についていろいろお聞きしたいのですが、このイベントはいつごろから準備を進められていたのでしょうか?
橋本さん 本格的な準備として、会場の手配やラジオ収録にご協力いただく方への依頼をしはじめたのは2024年5月ごろだったのですが、2023年11月ごろから自社ブランドの再構築をしたいね、という話はしていました。
――約2カ月間でイベントの具体的な内容が決まり、スピード感を持って準備期間を進めていたように思えたのですが、構想自体は1年前から練られていたのですね。過去にもこういった企画展は実施されていたのですか?
橋本さん 富山県や周辺地域で展示をしたり、イベントに出展したりしたことはありましたが、今回のような他社とのコラボレーションによって実現した展示販売や、公開ラジオ収録という内容では初めての挑戦でした。そして東京で開催するイベントというのも、今回が初めてでした。
――そうだったのですね。ぜひその実施に至った背景を聞きたいと思います! その前に、このイベントに登場した自社ブランドについて教えていただけますか。
橋本さん 2020年から、「#SilenceLAB(サイレンスラボ)」という名前で、仏具を新たなマーケットで多くの方に知っていただく活動をしています。過去に生産された仏具や、それに施された技巧を残し、倉庫に眠っている仏具を市場に戻すためにどんなことができるか? を探求しています。
高岡で生まれる仏具の多くは、金属(主に真ちゅう)で作られています。もともと仏具は香炉、火立、おりんなどが1セットでまとめて販売されるため、香炉単体で倉庫に残ってしまった場合、それを仏具として市場に戻すのはとても難しくなってしまいます。
そのデッドストックの再利用の方法として、金属を溶かすという選択肢もありますが、私は仏具を仏具のまま残し、そこに施された職人技とともに、仏具に関わる習慣や文化を残したいという思いで、こういった探求の場を設けています。
その探求の場の中で生まれたプロダクトが「わびさびポット※」です。仏具の1つである、お線香を立てるために使われる香炉を植物鉢として再利用し、私が大切に育てた植物との見た目の相性を考えて、セットで販売しています。
※わびさびポットはハシモト清の登録商標です。
心地のいい暮らしの所作や、倉庫に残された仏具を市場に戻す方法について、答えは1つではないし、すぐには見つからないかもしれないけれど、みんなで考えてみることが大事だと思っています。
――わびさびポットはどういったところで販売されているのですか?
橋本さん これまでは富山県を中心にボタニカルフェアやクラフトフェアなどに出店し、販売していました。自社ブランドを北陸以外の地域で発信することはほとんどありませんでした。
――そんななか東京でのイベントを初めて企画されたのは、これまでの出店での経験や学びが生かされた結果なのでしょうか?
橋本さん 過去に植物関連のイベントに出店した際には、他の植物と価格を比較されてしまうということがよくありました。もちろん、仏具を植物鉢として使用し、そこには着色職人による加工も施されているので、植物単体の価格以上のものになります。
そこで、ブランドの価値観に共感してくださった方に見ていただけるような、植物の業界から少し離れた場所にプロダクトを置いてみることによって、全く違う見え方になるのではないか? と考えたんです。ですので、今回どんな方に、どういった反応をもらえるのだろうか? というところが一番気になっていました。
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