二色の浜工場では環境負荷低減に向けた取り組みも進めている。オンサイト/オフサイトPPA(電力販売契約)により太陽光発電パネルを工場内にすでに設置しており、「工場全体の2割弱程度」(奥長氏)の電力をまかなっている。これにクレジットの購入を併せることで、CO2の排出量を実質ゼロ化してカ−ボンニュートラルを達成している。
2024年度には水素貯槽タンクと純水素燃料電池と、パナソニック エナジーのエナジーソリューション事業部が開発したEMS(エネルギーマネジメントシステム)を導入することで、水素エネルギーと太陽光エネルギーを組み合わせて再生可能エネルギーの創エネ/蓄エネに取り組む工場の実現を目指す。こうした仕組み全体の大まかな構成は、2022年に稼働開始したパナソニックの草津事業所(滋賀県草津市)における実証施設「H2 KIBOU FIELD」とほとんど同じだとする。
水素エネルギー関連設備の導入が太陽光発電のものに比べて遅れる理由については、「純水素燃料電池自体がシステム的に高価なもののため、製品の進化度合いを見つつ、最適な導入タイミングを探ったためだ」(奥長氏)という。なお、今後建設予定の水素貯槽タンクについては、外観をパナソニック製の電池に見えるような装飾を施す計画がある。奥長氏は「電池の形状に近づけることで、地域のランドマークのような存在にしたいという思いがある」と説明した。
パナソニック エナジーは乾電池製品のライフサイクル全体を通した環境負荷低減の取り組みも紹介した。その1つが同社は包装材の使用量を従来比50%以上削減した包装紙「エシカルパッケージ」の採用だ。EVOLTAシリーズに加え、他のアルカリ電池でも採用している。同パッケージは「2023年度グッドデザイン賞」でグッドデザイン賞に選定された。
もう1つが、使用済み乾電池の「サーキュラーモデル」構築の取り組みだ。イオンリテールと2023年6月に協業し、使用済み乾電池の回収とリサイクルに向けた実証実験を共同で進めている。「イオン」など合計22店舗に回収ボックスを設置して、集めた使用済み乾電池には電炉鉄鋼メーカーの東京製鐵が鉄や亜鉛、マンガンなどを取り出すリサイクル処理を施す。
電池の水平リサイクル自体は現時点では困難で、研究を進めている段階だ。一方で奥長氏は、「使用済み電池の全素材をそのまま新しい電池に使うのは難しいが、一部の再生材料を電池の材料として使うことからスタートしていきたい」とも語った。なお、こうした取り組みに対して二色の浜工場が果たしうる役割については、「再生材料に関する研究開発に加えて、具体的な計画は未定だが、例えば乾電池の再生処理プロセスを引き受ける可能性はある」(奥長氏)と説明した。
パナソニック エナジーは現在、国内の乾電池市場では約7割、同社が重点地域と定める東南アジアや中南米、インドなどの海外市場では約2割のシェアを得ている。国内市場では乾電池製品の環境/防災対応などをさらに進め、海外市場ではマンガン電池からアルカリ電池へ移り変わるニーズを捉えることで、さらなる市場シェア拡大を目指す。
パナソニックグループは1923年に「砲弾型電池式ランプ」の生産販売を開始したが、この年から数えると2023年は「エナジー事業100周年」に当たる。これを念頭に置きつつ、奥長氏は「非常に歴史ある乾電池事業を、この二色の浜工場からさらに進化させていきたい。今後も、人々のくらしの幸せと環境との調和を追求していく」と意気込みを語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.