日立ソリューションズは新たに2023年8月31日より、製造業の脱炭素をドイツやフランス、日本などの5つの製品、サービスで支援する「サプライチェーン脱炭素支援ソリューション」の提供を開始する。
日立ソリューションズは2023年8月30日、オンラインで会見を開き、新たに同月31日より提供を開始する、製造業の脱炭素をドイツやフランス、日本などの製品、サービスで支援する「サプライチェーン脱炭素支援ソリューション」の概要を説明した。課題の抽出から、製品/企業/サプライチェーンにおけるCO2排出量の把握や予測、ESG(環境、社会、ガバナンス)におけるサプライヤーの評価までトータルでサポートする。
サプライチェーン脱炭素支援ソリューションでは「企業や組織のCO2排出量の収集、可視化」「製品あたりのCO2排出量の計算、可視化」「サプライヤーのCO2排出量の測定、管理、削減」など主に5つのメニューを提供する。
その中で、日本で初めて提供するのが、製品やサプライチェーンのCO2排出量をAI(人工知能)を活用して高い精度で分析、報告できるドイツ発のソフトウェア「Makersite」だ。同ソフトウェアを提供するMakersiteと日本初の代理店契約を締結した。
Makersiteではスコープ1〜3を含めて、製品や企業、サプライチェーン全体でのLCA(Life Cycle Assessment)、GHG(温室効果ガス)プロトコルの準拠状況、CO2排出量の報告が可能になる。電力、燃料、熱、廃棄物などを各部門、拠点から収集して環境情報データベースで一元管理して可視化でき、AIを活用した原材料情報の分析機能を適用することで、材料別の排出量や標準的なコスト情報も取得できる。
日立ソリューションズ 産業イノベーション事業部サプライチェーン本部 第3部長の小沢康弘氏は「従来のLCAでは、データベースとのひも付けを人の手作業に頼る部分が多く煩雑であったが、MakersiteはAIを活用してマッチングを自動化し、その問題を解決している。データベースも欧州中心に10種類以上の中から選ぶことができる」と語る。
フランスのEcoVadisによるサプライヤーのサステナビリティ評価も提供する。質問表などの回答を基に第三者機関の専門家が100点満点でサプライヤーを採点するとともに改善点も示し、バイヤー側と共同で改善に取り組む。
「バイヤーが上場企業の場合、ESGの視点で機関投資家から厳しく見られているが、取引先のサプライヤーが非上場企業だと情報の開示はなかなか進んでいない。しかし、グローバルサプライチェーンとして見ると、バイヤーにサプライヤーを管理する責任がある」(小沢氏)
日立ソリューションズではサプライチェーン脱炭素支援ソリューションによって、2025年度に年間受注25件、売り上げ7億円、2027年度に年間受注50件、売り上げ16億円を目指す。
「この1、2年、さまざまな企業と話をしているが、企業の脱炭素への投資意欲は非常に高まっている。当初は企業も情報収集が主体だったが、2022年頃からCO2排出量の可視化のニーズが出てきた。ただ、可視化だけでは排出削減できない。今後はどうやって減らしていくかが大事になる。製造工程をデータに基づいて評価、分析するニーズが伸びてくると感じている」(小沢氏)
同社自身、SX(サステナブルトランスフォーメーション)を掲げて、若手社員を交えて新たな経営ビジョンや企業理念の策定などのプロジェクトを2022年から進めている。
日立ソリューションズ 経営統括本部 経営企画本部 担当本部長の野田勝義氏は「これまで企業が関わる環境、社会への負荷はコストをかけて対応する“トレードオフ”の関係だったが、持続可能な社会と企業を求めて、経済活動を環境価値、社会価値と両立させる”トレードオン”の時代に変わってきた」と見る。
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