Our Philosophyの具現化に向けた取り組みでは、タイヤ事業のありたい姿、スポーツ用品と産業品での展開、ESG(環境、社会、ガバナンス)経営の施策を紹介した。
タイヤ事業のありたい姿の実現に向けては、転がり抵抗低減や軽量化、高荷重負荷に対応するタイヤ基本性能レベルアップ技術の開発を実施するだけでなく、独自のタイヤセンシング技術「センシングコア」、ゴムの性質が変わる技術「アクティブトレッド」、特殊吸音スポンジ「サイレントコア」対応のタイヤパンク応急修理キット(IMS)に注力する。加えて、性能持続やサステナブル原料比率のアップ、ライフサイクルアセスメント(LCA)に対応した製品づくりの技術を開発する。
山本氏は「当社の独自技術と基盤技術を進化および融合させて、電気自動車(EV)をはじめとする将来のモビリティのニーズや期待に応えていく。まずは各技術で電動化に対応する。その後、自動運転やシェアリングなどにも対応し、CASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)とサステナビリティ向けの取り組みを行う」と述べた。
具体的には、タイヤ基本性能レベルアップ技術では2024年から高性能EVタイヤを中心に順次製品を展開し、2027年には2019年比で転がり抵抗30%低減および20%の軽量化を達成した次世代EVタイヤを発表する。
同社独自技術であるアクティブトレッドは2024年発売の次世代オールシーズンタイヤに投入し、2027年に発表する次世代EVタイヤにも採用する。アクティブトレッドはぬれるあるいは冷やすと路面に接するタイヤのトレッドが軟化し、低燃費性能を保ちつつ、雨天や氷雪時のグリップ性能を高める。さらに、急な天候変化にも対応し、夏と冬の2シーズンにも応じるため、ユーザーが夏用と冬用などさまざまなタイヤを持たずに済むため、地球の環境負荷低減に役立つ。「今後、主流となるEVでは一度の充電で長く走行できることが重要で、これを実現するためには、低燃費につながる転がり抵抗の低減と雨天や氷雪時のグリップ性能向上が求められる。これらに対応するのがアクティブトレッドだ。なお、アクティブトレッドの詳細は2023年10月に開催される『JAPAN MOBILITY SHOW 2023』で発表予定だ」(山本氏)。
一方、センシングコアの事業化では、これまでの自動車メーカーへの間接式空気圧警報装置(DWS)の納入実績(5000万台)をベースに段階的にビジネスを展開し、2030年に事業利益100億円以上を目指す。「当社はこれまで独自のDWSを5000万台の車両に導入している。この実績を持つDWSの技術を応用したのがセンシングコアだ」(山本氏)。
センシングコア事業化のステップ1では、2024年からセンシングコアを自動車メーカーに新車用のソフトウェアとして販売する。これまでに40社に提案しており、既に海外自動車メーカーで2024年の納入を決定した企業もあるという。「多くの自動車メーカーから期待の声が寄せられている。今後、自動車メーカーへの納入を拡大し、2030年までには30社以上の自動車メーカーに納入する見込みだ」(山本氏)。
ステップ2では、他社のサービスとセンシングコアの組み合わせにより車両の故障予知サービスを構築し、ユーザーに提供する。現在、住友ゴム工業は米国車両予知会社のViaductとトータル故障予知ソリューションサービスの開発に向け共同実証実験を行っている。共同実証実験では、住友ゴム工業がセンシングコアによるタイヤの故障予知を担当し、ViaductがAI(人工知能)によりタイヤ以外の車両部品の故障予知を担っている。
山本氏は「ViaductのAIを活用したタイヤ以外の車両部品の故障予知サービスに当社のセンシングコアで得られる技術を組み合わせることで車両全体の状況をリアルタイムに確かめられるようになる。これにより、走行時の安全性向上、車両の稼働率向上、メンテナンスコストの削減といったフリート会社の抱える課題を解決できる」とコメントした。
ステップ3では、センシングコアをメンテナンスや保険、リースなどと組み合わせてトータルフリートサービスを開発し展開する。これらの取り組みにより2030年に事業利益100億円以上を目指す。
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