主力製品が軌道に乗ったことで、CuboRexは事業を着実に拡大していった。社員採用にも力を入れており、エンジニアの平均年齢は30代半ばで、大手メーカーからの転職組も少なくないという。
CuboRexでは自社のカルチャーとの相性に加え、趣味でモノづくりをしていることをエンジニアの採用基準としている。
「趣味でモノづくりをする場合、個人で一から製作するため幅広い技術を理解する必要があります。結果的に自分のコア技術だけでなく、周辺の技術にも視野を広げられるのでスタートアップに向いています。また、趣味のモノづくりでは失敗や想定外の出来事が付きものなので、楽観的に取り組んでいる人が多いのも特徴といえます。この『楽観的なモノづくり』が研究開発段階では欠かせないマインドセットなのです」(嘉数氏)
仕様と狙うべき市場が見え、原価や販売戦略が固まった製品は、QCD(品質/コスト/納期)を意識して確実に開発を進める必要がある。こうしたプロセスを丁寧に進めることは、多くのエンジニアが得意とすることだ。しかし、研究開発からスタートする新規事業は不透明な要素も多い。嘉数氏は新規事業としての「不透明なモノづくり」は投資として必要だとした上で、常に手を動かしながら、楽しく取り組める姿勢がエンジニアに求められると語る。
「新製品を開発する際には試作品を作りながら市場調査を並行して進めるケースもあります。初期のCuGoがまさにその例なのですが、模索する段階では楽観的なモノづくりを経て市場の評価を確認しながら、量産フェーズではきちっとしたモノづくりに移るというのが理想です。E-cat kitは既に1000台以上売れているので、後継機の開発は狙った市場と仕様に向けて、きちっと進めることが求められています」(嘉数氏)
一方で、自社の開発能力向上にも力を入れる。技術の合わせ技で成立するロボットやモビリティの開発には電気、機械、ソフトウェアといった技術領域軸に加えて、研究開発、設計、ソフトウェア開発、生産技術といったプロセス軸を掛け合わせて網羅的にカバーする必要がある。
さらには、部品調達やサプライヤーマネジメントまで内製化することで、量産時のコストダウンが実現できる。
「縦割りで進む大企業とは異なり、スタートアップはエンジニア個人の裁量権が大きいのが働く上での魅力です。上流で決まった要件やスケジュールに沿って、言われた通りに作るのではなく、『自分ならどうしたいか』という起点から仕事に取り組むのがスタートアップでの働き方です」(嘉数氏)
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