企業の電力自給自足を後押し、再エネの自家消費を支援する新サービス脱炭素

NECは2022年12月22日、太陽光発電など再生可能エネルギーをICTで統合制御する「NEC Energy Resource Aggregation クラウドサービス」に、新たに企業や自治体の自己託送を支援するオプションを拡充し、2023年4月から提供開始すると発表した。

» 2022年12月28日 08時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 NECは2022年12月22日、太陽光発電など再生可能エネルギーをICTで統合制御する「NEC Energy Resource Aggregation クラウドサービス(RAクラウドサービス)」に、新たに企業や自治体の自己託送を支援するオプションを拡充し、2023年4月から提供開始すると発表した。同サービスの活用によって、企業は再生可能エネルギーの自家消費量を拡大し得る。

企業の再生可能エネルギー自家消費を促進

 近年、化石燃料を中心とした電源構成から脱却し、太陽光発電など再生可能エネルギーを軸とする電源構成へ移行する動きが強まっている。しかし、再生可能エネルギーは自然条件によって供給量が変動しやすく、コントロールが難しい。このため、電力の需給バランスを取るためには、供給量変化に合わせて需要量を変化させていかなければならない。

 具体的には、家庭用、または業務用の蓄電池や、EV(電気自動車)、工場などの発電設備に対して、AI(人工知能)による需要予測やIoT(モノのインターネット)による監視を通じて安定制御を実施する必要がある。この制御のことを、リソースアグリゲーション(RA)と呼ぶ。NECは2019年度からRAサービスを開始しており、2021年度にはRA事業者として需給調整市場に参入を果たすなど、RA事業に継続的に取り組んできた。

リソースアグリゲーションの概要[クリックして拡大] 出所:NEC

 今回発表したRAクラウドサービスは、企業や自治体による再生可能エネルギーの自己託送をクラウド上で支援するというもの。自己託送とは、太陽光発電設備を有する事業者が、発電した電気を事業者が持つ他の設備へと送配電ネットワークを通じて送電することである。自己託送の取り組みが増えれば、企業や自治体における再生可能エネルギーの自家消費量が増大する効果も見込めるため、注目を集めているという。

RAクラウドサービスの概要[クリックして拡大] 出所:NEC

 ただ、自己託送を実施する場合、需要量や発電量の計画提出を日々行うなど、オペレーション面での負荷が大きくなる。さらに、計画と実績値に乖離が生じれば、電力の実需給における過不足を調整するためのインバランス料金を支払わなければならないといったリスクもある。

 これに対してRAクラウドサービスでは、自己託送業務に必要となる発電量や需要量の予測、計画作成業務に必要な機能をクラウド上で提供するため、企業や自治体のオペレーション負担を軽減する効果が見込める。さらに、NEC 都市インフラソリューション事業部門 第一事業開発統括部 統括部長の川島美一氏は「これまでのRA事業で当社が培ってきた知見に加えて、電力需給の予測を行うためのAIやIoT技術といった、ITベンダーならではの強みを生かした支援が行える」とも語った。NECは今後、自己託送に必要な発電設備の設置から自己託送の運用保守、契約支援などのサービスを一気通貫で提供していく計画だという。

 今後の展望について川島氏は、「最近では電気代の高騰を受け、企業や自治体で再生可能エネルギーの発電設備を導入し、エネルギーの自給自足によって電気代削減と脱炭素貢献を進めようとする動きもある。自己託送による自家消費促進の動きは、社会全体での再生可能エネルギー導入の後押しになるのではないか。RAの市場はまだ黎明期だが、先行グループの1社として市場をけん引して行きたい」と説明した。

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