本連載第84回で取り上げたバイオエコノミーに関連して、米国大統領行政府は、2022年9月12日、「持続可能な安全でセキュアな米国のバイオエコノミーのために進化するバイオ技術/バイオ製造に関する大統領令」(関連情報)を発表した。この大統領令は、保健医療、気候変動、エネルギー、食品安全、農業、サプライチェーンのレジリエンス、国家・経済安全保障における革新的なソリューションに向けて、政府全体のアプローチを調整しながら、バイオ技術/バイオ製造業を進化させることを目的としており、以下のような構成になっている。
このうち、「第1条.政策」では、以下のような具体的政策を掲げている。
また、「第2条.調整」では、国家安全保障問題担当大統領補佐官(APNSA)が、経済政策担当大統領補佐官(APEP)や科学技術政策局(OSTP)長と相談しながら、国家安全保障覚書2(2021年2月4日発効、関連情報)で規定された省庁間プロセス(NSM-2プロセス)を通して、大統領令の実行に必要な行政機関の活動を調整するとしている。
さらに、「第3条.さらなる社会的目標に向けたバイオ技術/バイオ製造R&Dの利用」では、保健福祉省長官、エネルギー省長官、農務省長官、商務省長官、国立科学財団理事長に対して、大統領令発効後180日以内に、保健医療、気候変動とエネルギー、食品と農業のイノベーション、強靭なサプライチェーン、最先端の科学的進歩に関連する社会目標を促進するバイオ技術・バイオ製造業についての報告書を提出するよう求めている。
本連載第84回で取り上げたバイオエコノミーのサイバーセキュリティ/プライバシー課題に関連して、「第4条.バイオエコノミーのためのデータ」では、セキュリティ、プライバシーおよびその他のリスク(悪意のある誤用、操作、流出、削除など)を特定し、これらのリスクを低減するためのデータ保護計画を提供することを表明している。加えて、国土安全保障省長官は、国防総省長官、農務省長官、商務省長官(NIST長官を通じて行動する)、保健福祉省長官、エネルギー省長官、行政管理予算局(OMB)長と調整しながら、国家サイバーセキュリティの向上に関する大統領令第14028号(2021年5月12日付、関連情報)および関連する法律に従って、連邦政府情報システムに保存された生物学的データ向けの適切なサイバーセキュリティベストプラクティスを特定し、提供するとしている。さらに、商務省長官は、NIST長官を通じて行動し、保健福祉省長官と調整しながら、大統領令第14028号の規定に従って、米国連邦政府に販売するソフトウェア開発向けベースラインセキュリティ標準規格を設定する際に、研究器具、計装機器、データマネジメント向けソフトウェアを含むバイオ関連ソフトウェアを考慮すべきであるとしている。
このように、米国のサイバーセキュリティ/プライバシーを含むバイオエコノミー施策についてみると、本連載第65回で触れた「クロスエージェンシー」の考え方が根底にあることが分かるだろう。医療機器企業も、保健福祉省や傘下の食品医薬品局(FDA)などの規制政策動向をウォッチしているだけでは不十分である。
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