高い品質を特徴としてきたはずの国内製造業だが、近年は品質不正や重大インシデントなどの発生が後を絶たない。本連載は、品質管理の枠組みであるトヨタ式TQMと、製造現場での活用が期待されるIoT技術を組み合わせた、DX時代の品質保証強化を狙いとしている。第3回は、前回に続きトヨタ式TQMの体系と管理上のポイントについて紹介する。
本連載は、品質管理の枠組みであるトヨタ式TQM(Total Quality Management)と、製造現場での活用が期待されるIoT(モノのインターネット)技術を組み合わせた、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代の品質保証強化をテーマとしています。
今回は、前回の「トヨタ式TQMの体系と管理上のポイント(その1)」に続いて、TQMの視点について掘り下げていきます。
⇒連載「トヨタ式TQM×IoTによる品質保証強化」バックナンバー
TQMでは、以下の7つの項目を重視しています。
ここからは各項目について見ていきましょう。
まずは顧客の満足を追求するために、品質を第一に捉えることを重視しています。一般的に、Q(品質)、C(コスト)、D(納期)のバランスを見て考えるという話をよく聞きますが、その場合に重視しているのはCのコストであり「できるだけ安く」となります。そうなると、どうしても安い人件費でまとめて作るといった考え方になり、顧客のほしいタイミングで納品することが難しくなってしまう上に、どうしても品質面の問題が出てしまいます。
顧客の満足を得るために、品質面の要求事項を必ずクリアしていくことが重要です。
理想的な工程を作るためにはムダを見つけそのムダを排除していくことになります。そのためには現実=事実(誰が見ても同じと捉える客観的な事実)をしっかり見て原因を特定し、解決していく必要があります。それを実現するために次の7つの視点が重要となります。
問題解決をする際に、問題を抽象的に捉えて解決策を考えているケースがあります。この場合「もぐらたたき」的な対応にとどまることが多いようです。
まずは具体的な事実として誰が見ても同じと判断できるような客観的な事実を捉える必要があります。そのためには、不良の数や検査結果のばらつきを数字でしっかり捉えてデータで語ることが重要です。
3現主義は、日本のモノづくりの現場で誰もが知っているほどに浸透している言葉です。「現地」は実際の現場に行き、「現物」として実際の工程の設備の動作や人の作業を見て、「現実」として事実を捉えるということになります。トヨタ生産方式を体系化したことで知られる大野耐一氏の語録として有名な「まるを書いて立ってろ」というのはまさにこれになります。現地、現物の前でじっくり見ていると現実が見えてくるので、ムダや問題点が把握できるということにつながります。
問題の事象は多岐にわたります。現実を見てデータを記録していくと、それらを整理して問題解決を図ることが可能になります。そのために重要なのが「層別」です。例えば、不良の発生では「〇〇にキズがついている」「〇〇に色むらがある」といったように、異なる事象が発生しています。これらを層別して「キズで何件」「色むらで何件」と整理していけば、どこから問題解決したらよいのかを判断しやすくなります。
なぜなぜ5回は、問題の真の原因となる要因を導き出す手法です。必ず5回行わなければならないわけではありませんが、1回か2回の掘り下げでは要因にはたどりつかないため、5回ぐらいは掘り下げていく論理的思考能力が求められるということを意味しています。常に、なぜなぜ5回をする癖を付けることが重要です。
問題解決がうまくいかないのは、要因を特定できていないことがほとんどです。常になぜなぜ5回の癖が付いていて、問題の事象から要因を特定できる現場は、問題解決に長けた現場力があるといえるでしょう。なぜなぜ5回が、安定した品質保証を継続するための基本動作として根差していることが大きな差を生み出します。
見える化、目で見る管理とは、「いつ/誰が/どこで/何をしているか」を把握できる状態にしておくことです。改善がうまくいかないケースは、基本ともいえる見える化、目で見る管理をできていないことが原因であることが多いのです。見える化、目で見る管理のメリットは、問題を誰が見ても分かるようになり、すぐに解決に取り組めることにあります。
品質管理の目的は、顧客が満足する製品を経済的に作り出すことです。具体的には「製品の欠点を防止する」「製品や作業におけるバラツキを少なくする」ことです。そのためには「作業の不具合をなくすとともに効率向上を図る」「事前に予測し予防する方法を考える」こととなり、「発生したものや類似の事例に対し再発防止を図る」ことが重要となります。
QC(Quality Control)は数字やデータを活用して、事実に基づいて判断し活動します。そのためには一般的に「7つ道具」※)の手法を活用します。
※)QC7つ道具:パレート図、ヒストグラム、管理図、散布図、特性要因図、チェックシート、層別
バラツキを捉えて少なくすることは品質管理の目的の一つです。バラツキとは、同じ物を生産している過程で製造条件や検査などの値が平均値からどの程度ズレているかのことを指します。
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