工場で増える無線LAN活用、干渉や相性問題など安定使用には何が必要か工場ネットワーク

スマート工場化が進む中、工場内での無線LAN活用が広がりつつある。ただ、通信の安定性やセキュリティなどの課題も顕在化している。これらの解決に向けてどのような考え方でどう取り組めばよいのか。対談を通じて解き明かす。

» 2022年05月25日 10時00分 公開
[PR/MONOist]
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 製造現場でIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)など、デジタル技術を活用するスマート工場化の動きが広がっている。スマート工場化を進める中では工場内のネットワーク活用が欠かせないが、その中で特に利用が増えているのが無線LANである。

 その一方で、工場内で従来は考える必要がなかった無線LANによるトラブルも増えている。干渉の問題や、機器ごとの接続の相性問題などにより、設備の安定稼働や情報収集が行えないトラブルが発生している他、サイバー攻撃の脅威も新たに生まれ、セキュリティ対策なども必要となっている。

 これらに対応するためには、どのような考えや対策が必要になるのだろうか。工場向けネットワークでさまざまな実績を持つ日本ヒューレット・パッカード Aruba事業統括本部(以下、HPE Aruba) プリセールスコンサルタント 岩渕祥司氏と、MONOist編集長の三島一孝が対談を行った。

スマート工場化で広がる無線LAN活用

三島 製造業の工場内での無線LAN活用が増えていますが、製造現場における無線LANの使われ方はどのように変わってきていると感じますか。

photo HPE Aruba プリセールスコンサルタント 岩渕祥司氏

岩渕氏 無線LANは有線LANに比べて「使う場所を選ばない」「レイアウトの自由度が高い」「一度に複数の機器と通信ができる」などの利便性があります。そのため以前から使われるケースはありました。ただ最近は、特にこれらの利点を活用できるアプリケーションが増え、活用の場が広がっています。

 前回も紹介しましたが、特に工場では配線コスト削減への期待が大きいと感じています。もともと工場で無線LANを使う機器といえばPCやハンディターミナルが主流でしたが、今ではAGV(無人搬送車)やラベル貼り作業で使われるハンディプリンタなど、さまざまなモバイル端末での利用が増えています。またIoTの進展により、センサー情報の収集など、モニタリング用機器のバリエーションも増えています。

無線LANは機器ごとの接続相性も存在

三島 活用が広がる中で、製造現場でも実際にさまざまなトラブルが生まれていますが、どのような課題があると考えますか。

岩渕氏 「電波がつながらない」や「通信が遅い」など無線ネットワークの一般的な問題が同じようにあるのは前提ですが、工場の無線LANでは、接続する多様な機器の相性で問題が起こる場合が多いのが特徴です。オフィスではPCやスマートフォン端末など使う機器の種類はある程度限られ、環境的な差異もそれほど大きくありません。工場ではIoT化によってさまざまな端末が無線LANを使い始めており、さらにそれらが使われる環境も千差万別です。そうなると、うまくつながる端末もあれば、そうではない端末も出てきます。さらに、それが環境の問題なのか、端末の問題なのかの切り分けも難しくなり、安定した通信環境を維持し続けるのが難しくなります。

三島 なるほど。例えば、同じ無線LANに接続しているはずなのに、ハンディターミナルは問題なく稼働してもAGVは接続できないような状況が発生するということがあるわけですね。

岩渕氏 そうですね。実際にAGVの接続問題での問い合わせは非常に多くなっています。無線LANという技術の成り立ちを考えると、AGVとの相性が良いわけではありません。無線LANは、ある程度固定された環境においてワイヤレス化を実現するための技術で、ローミングなどの技術もあるものの移動し続けるモノに対して使うことをベースに開発された技術ではないためです。AGVなど移動体で活用されるケースが増えたことも、工場内の無線LAN活用の難しさが注目される1つの要因になっていると考えます。

三島 ネットワークそのものの課題とはやや異なりますが、製造現場でIoT活用のために勝手に無線LANを設置し、これらが“管理されていないネットワーク”として工場内に存在するケースも増えていると聞きます。

岩渕氏 実際にそういう場面を目にすることもあります。IT部門のガバナンスが効いているところは問題ないのですが、工場の改善活動の一環として無線LANを製造現場に導入し、IT部門が管理できていないケースも確かによく見られます。そのまま両者がコミュニケーションを取らないまま無線LANが使用され続けてしまうと、予想もつかないところで通信の干渉が生まれます。また、そうなった場合に原因にたどり着くまでにも多くの時間がかかり、その間に設備の稼働を止めなければならなくなったケースも実際にありました。

定常的なモニタリングと現場コミュニケーションが不可欠

photo MONOist編集長の三島一孝

三島 こうした課題を解決するためにどのような考え方や配慮が必要でしょうか。

岩渕氏 設計面に関しては前回紹介しましたが、運用面で重要になるのは「定常的に見える化する」ということだと考えます。

 無線LANはケーブルでつながっている有線LANとは異なり接続状況が目に見えないため、トラブルがあった場合、どこが問題なのかが分かりにくいという特徴があります。「機器が無線LANにつながらない」という相談が持ち込まれたとしても、考えられる要因がいくつもあるのです。

 接続の様子が見えないからこそ、それぞれの機器の動き方を見える化し、定常的に管理しておく必要があります。そうすることで、まずトラブルを的確に把握できるようになります。さらに、常にモニタリングすることで問題点の切り分けが素早く行えるようになり、迅速な復旧が可能になります。これらをもう一歩進めると、トラブルが起きる前に問題を把握し、解決を図る“予知保全”も行えるようになります。例えば、現時点で問題は起きていないけれど、通常よりも通信パフォーマンスが落ちている“隠れトラブル端末”を見極め、トラブルにつながる前に対策を打ち、設備稼働に影響を与えないようにすることも可能です。

 いずれにせよ電波空間は共有のものなので、現場のネットワーク環境を一元的に管理できる形を作り、見える化しておくことが、トラブル発生時も迅速な対処が可能になるポイントだと考えます。また、管理されていない機器による予想外のトラブルを抑えるためにも、情報システム部門と製造現場部門のコミュニケーションも重要になってきます。定常的な見える化と組織間のコミュニケーションが重要なポイントだと考えます。

三島 本日はありがとうございました。

工場無線LANの課題を解決するHPE Arubaのソリューション

 製造現場で無線LANの活用は広がっているが、機器の違いによる接続の相性、トラブルが起きた際の問題点の切り分けの難しさなどの課題がある。これらに対応するには、目に見えない無線LANを“見える化”して、定常的にネットワーク管理しておくことが重要になる。HPE Arubaでは無線LANの安定的な運用に対して2つのソリューションを提供している。

クラウドから全ネットワークを管理できる「Aruba Central」

 まず1つ目が、クラウドのネットワーク管理ツール「Aruba Central」だ。複数拠点にまたがる有線、無線ネットワークの設定や監視をクラウド環境から一括実施できる。既に導入済みのIAP(Instant Access Point)やスイッチなども、クラウドからの管理に移行することが可能だ。ネットワーク全体を統合管理することにより、オペレーションの簡素化、機敏性の向上、経費の削減を実現する。

 「Aruba Central」の大きな特徴は、機械学習による通信の最適化をソリューションとして提供している点だ。「Aruba Central」に内蔵の「AI Insights」により、常時監視によるデータでベースラインとの比較を行い、有線、無線、WANのさまざまな問題点を、ユーザーがエラーを発見する前にいち早く発見し、自動的に最適化する。トラブルが起きた場合には、その原因や直すべき箇所などを的確に判断し、速やかな対処をサポートすることも可能だ。過去に蓄積されたデータをもとに、AIを活用するため、季節や日時などの変動などにも対応。トラブルを事前に予防し、ネットワークの継続的な最適化に必要な分析やデータ、推奨事項の提供も行う。

 また、「Aruba Central」のダッシュボードは直感的で、有線、無線、WANに至るまでネットワーク全体を可視化できる。1つのダッシュボードで全てのオペレーションを管理することにより、ネットワークのプロビジョニングや構成、メンテナンスの簡素化が可能だ。さらに、クラウドをベースとした利点を生かし、先進の技術が次々に採用されていることもポイントだ。

photo 「Aruba Central」に内蔵された「AI Insights」の画面イメージ。ユーザーが直すべき箇所などを提示しアクションにつなげられる[クリックで拡大] 出所:HPE Aruba

自社に特化した設定が可能な「Aruba AirWave」

 もう1つのソリューションがオンプレミスのネットワーク統合管理基盤「Aruba AirWave」だ。HPE Arubaの無線LAN製品をはじめとして、Aruba以外のルーターやスイッチなどの有線機器も一括して監視できる。クラウド型の「Aruba Central」とは対照的に顧客のデータのみを収集し、その情報を利用してCSV、PDF、XMLなどの形式でレポートを自動生成できる。これらのサポートを通じて、安定したネットワーク運用を実現する。

 ダッシュボードは、ドリルダウンするだけで簡単に各端末のネットワーク環境やアプリケーションサービスを確認できる。リアルタイム検出、トポロジーの表示、強力なトラブルシューティングツールによりネットワークの問題を素早く解決する。モバイルアプリやWebアプリのパフォーマンス、使用状況なども可視化でき、アプリのカテゴリー別にWi-Fi使用を制御するなどビジネスに重要なトラフィックを保護する。カスタムアラートやクライアントシミュレーションテストにより、ユーザーに影響を及ぼす問題を迅速に解決できる。

photo 「Aruba AirWave」のダッシュボード[クリックで拡大] 出所:HPE Aruba

「Aruba Central」と「Aruba AirWave」の使い分け

 「Aruba Central」も「Aruba AirWave」どちらもネットワーク管理ツールだが、その違いとしては以下の3つの点がある。

 1つ目は、構築環境による違いだ。「Aruba Central」はクラウド環境、「Aruba AirWave」はオンプレミス環境であるため、ソフトウェアそのもののメンテナンス性を見ると「Aruba Central」の方が高く、先進技術を採用しやすいという利点がある。一方で、データプライバシーの問題などを考え、外部にデータを出したくないという場合にはオンプレミス型の方が好まれるため「Aruba AirWave」が使いやすいという面がある。

 2つ目が過去の振り返り期間だ。「Aruba AirWave」では「前週の金曜の18時頃」など、ピンポイントに日時を指定して、その時の状況を振り返ることができる。製造現場でトラブルが起きた場合にはいち早い復旧が優先される傾向にあるため、問題の究明は後回しになりがちだ。この機能があれば時間が経過してもトラブル発生時の状況を振り返ることができ、問題の根治につなげられる。

 3つ目が、他社のアクセスポイント管理の違いだ。「Aruba Central」はHPE Arubaのアクセスポイント専用だが「Aruba AirWave」は他社のアクセスポイントも管理可能だ。ベンダーをまたいでアクセスポイントを管理したい場合には「Aruba AirWave」が選択肢となる。これらの3つの点を踏まえた上でそれぞれの環境にあった使い方を進めるとよいだろう。

 今後もスマート工場化の流れは加速し続け、無線LANの活用もますます広がりを見せるのは間違いない。無線LANの利便性を享受すべく一歩を踏み出すのであれば、まずは無線LANの定常的な管理に乗り出してみてはいかがだろうか。その際には、ネットワークの専門家としての知見を持ち、「Aruba Central」と「Aruba AirWave」という2つのソリューションをそろえるHPE Arubaは頼れるパートナーとなることだろう。

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提供:日本ヒューレット・パッカード合同会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2022年6月3日