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» 2021年11月02日 14時00分 公開

TOYO TIREはタイヤのリアルタイムセンシングをいかにして実現したか製造業がサービス業となる日

SASは2021年10月21〜22日にかけて、DX(デジタルトランスフォーメーション)の先進事例などを紹介するオンラインイベント「SAS FORUM JAPAN 2021」を開催した。本稿では同イベントからTOYO TIREが実施した、タイヤセンシング技術の行動実証実験に関する講演内容を抜粋して紹介する。

[池谷翼,MONOist]

 SASは2021年10月21〜22日にかけて、DX(デジタルトランスフォーメーション)の先進事例などを紹介するオンラインイベント「SAS FORUM JAPAN 2021」を開催した。本稿では同イベントからTOYO TIREが実施した、タイヤセンシング技術の行動実証実験に関する講演内容を抜粋して紹介する。

エッジ上でタイヤ力を推定

 現在、自動車をはじめとするモビリティ市場はいわゆる「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング&サービス、電動化)」と呼ばれる技術革新や、サービスの高付加価値化に注目が集まっている。こうした状況を背景にTOYO TIREでは、従来タイヤに求められていた「車両重量に耐える」「ドライバーの意図した方向に進ませる」といった役割に加えて、より安心・安全な車両移動を支援する機能を担わせる取り組みを進めている。

 その中核となるのが、タイヤ内外に搭載したセンサーからグリップ力、路面状態、荷重状態などのデータを収集するタイヤセンシング技術である。データ分析技術やAI(人工知能)を活用して、車両走行時のタイヤの状態を「タイヤ力」としてリアルタイムで可視化することで、ドライバー支援を図る。

タイヤ力推定の概略図[クリックして拡大] 出所:TOYO TIRE

 収集したセンサーデータは車両のエッジデバイスに搭載された「タイヤ力推定モデル」で演算処理されて、ドライバーに可視化して提示する。エッジデバイスはモバイル通信を行ってクラウドサーバともデータ送受信を行う。クラウド側では送られてきたデータを基に、タイヤ力推定モデルの構築、更新などを行う。

 タイヤ力推定モデル構築にはSASのAIプラットフォーム「SAS Viya」を使っている。TOYO TIRE 中央研究所 第二研究部の竹澤宏典氏は「SAS独自のインメモリテクノロジーがタイヤ力推定モデル構築という目的にマッチしていることに加えて、Pythonなどの使い慣れた言語で開発できる点が魅力だった」と語った。

リアルタイムでデータ可視化するのに必要だったこと

 これに加えて、リアルタイムなデータ可視化を実現するために、エッジデバイス上でのストリーミングデータ処理「SAS Event Stream Processing」を採用した。バッジ収集、データ保持、データ分析という一般的なデータ処理モデルを経ずに、収集したセンサー情報を瞬時に可視化できるようになった。

リアルタイム処理を実現[クリックして拡大] 出所:TOYO TIRE

 またエッジデバイス上でタイヤ力推定モデルを駆動させるために、マルチタスクラーニングを採用しているという。従来技術ではタイヤ力のスコアリングを行う際、タイヤに加わる前後横方向の力と荷重それぞれについて、AIモデルが1つずつ必要になる。4輪全てで同様の処理が要求されるため、処理性能に限界があるエッジデバイスでは十分に対応できない。このためマルチタスクラーニングを利用することで、エッジデバイス上でも動作する軽量なモデルを構築した。竹澤氏によると「学習コストも従来技術比で3分の1になった」という。

マルチタスクラーニングを採用[クリックして拡大] 出所:TOYO TIRE

通信不良下ではデータをエッジ上に一時保存

 TOYO TIREはこれまでに晴天、雨天、降雪時などさまざまな気象条件下で、市街地や山道、高速道路など公道での実証実験を行ってきた。この中で課題となったのは、山間部やトンネルなど路面状況が良好ではなく、かつ、通信環境も悪い環境への対策だ。

 竹澤氏によると、この問題の解決においてもSAS Event Stream Processingを活用しているという。センサーデータをエッジデバイス上でストリーム処理して一時保存することで、クラウドサーバと通信が行えない際にエッジデバイス上でデータを一定期間保存して、復旧後にまとめてクラウドに送信する仕組みを構築した。

通信環境不良時の対策を実施[クリックして拡大] 出所:TOYO TIRE

 竹澤氏はタイヤ力に関連する研究成果について、「これまで把握が困難だったタイヤ使用状況に関連した情報を取得できるようになった。中期経営計画の中でも発表しているが、公道での実証実験を通じて、タイヤの使用状況やモジュール化技術を活用して、ユーザー志向のソリューションを今後も進めていく方針である」と語った。

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