特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2021年08月24日 09時00分 公開

IoT技術を活用し貧困解決を目指すFintechベンチャーが知財を重視する理由ベンチャーに学ぶ「知財経営の実践的ヒント」(1)(2/2 ページ)

[MONOist]
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なぜ知財権を取得する必要があったのか?

 当社のビジネスモデルを支えている主な要素は技術(IoTデバイスのMCCSとプラットフォームMSPF)です。同様のビジネスへの参入障壁を高めるためには、知的財産による保護が不可欠だと会社設立時から経営層が知財を重要視していました。

 仮に独自開発した技術がユニークで差別化されていたとしても、他者が容易に模倣できる状況では当社は競争優位性を確保できません。知財権の取得は、差別化された技術の模倣困難性を達成する手段として有効です。このため、知財戦略を経営の根幹に据えて、権利取得を推進してきました。また、知財権の保有は投資家や大企業からの信用獲得につながり、企業価値の向上に寄与する可能性もあります。こうした観点も当初から視野に入れていました。

 ただ、多くの中小企業、ベンチャー企業では人的/物的/金銭などのリソースが乏しく、知的財産への積極的な投資が困難な場合が多いでしょう。多分に漏れず、当社もそうした状況下にありました。そこで積極的に活用したのが知財の助成金制度(東京都やJETROなどが各種助成事業を実施)です。なお、助成金の申請書類は記入方法や添付書類の内容も複雑なため、各都道県やJETRO(日本貿易振興機構)などの担当者のアドバイスを積極的に聞くことや、添付書類の準備について社外の知財専門家(特許事務所や特許調査会社など)の支援を受けながら申請書類の作成を行うことをオススメします。

 余談ですが、現在の助成金制度は紙資料の提出が求められる場合が多く、申請者の負担が高いと思います。今後手続きのオンライン化が進み、中小企業やベンチャー企業にとって円滑な申請が可能となることも期待したいものです。

自社ビジネスの実施に必要な知財ポートフォリオ形成により参入障壁を構築

 当社はグローバルで事業を展開しており、既に事業展開している国に加え、事業展開予定国や模倣品対策国なども考慮のうえ、グローバルでの知財権の取得を進めています。

 特許については、早期審査や面接審査制度なども活用することで国内の早期権利取得を実現しています。グローバルでは15カ国以上に特許を出願しており、日本での権利取得後に各国の早期権利取得に関する制度を活用して権利取得を推進中です。また、商標についてはビジネスを展開する上で必須なロゴやネーミングの権利取得によって、商標ポートフォリオの構築を進めています。具体的には企業ロゴ、社名、社名の略称、MCCS、MSPFや当社FinTechサービスを活用したマイカーローンのサービス名称などの商標取得に取り組んでいます。

 このように当社では知財ポートフォリオを形成することで、他者による当社の技術やブランドにおける模倣困難性を高めながら参入障壁の構築を進めています。読者である中小企業、ベンチャー企業の皆さまにも、自社の競争優位性を確保する上でこうした視点を参考にしていただければと思います。

小括

 今回は、知財権取得の必要性、知財ポートフォリオ形成による参入障壁の構築を中心に紹介してきました。次回からは、コミュニケーションを重視した知財活動の事例と効果について紹介したいと思います。

筆者紹介

高橋 匡(たかはし ただし)

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コミュニケーション本部 知財グループ課長 AIPE認定 知的財産アナリスト(特許)

加工食品メーカー、刃物総合メーカーにて少数知財部門立上げを経験後、2021年より現職。

顧客視点での提案を強みとし、社内外におけるコミュニケーションを重視した知財活動に従事。2021年より現職。

主な活動

2018年度特許庁事業「高度な民間特許情報サービスの発展に関する調査」にかかわるデザイン思考を用いたワークショップに参加。

2021年に知財ガバナンス研究会にメンバーとして参加し、知財情報を活用した社内外とのコミュニケーションの活性化検討する会(知財情報活用分科会)の発起人として副代表を務める。

Twitter

https://twitter.com/T_Tadashi0912

『一橋大学 吉岡(小林)徹 × GMS郄橋匡 | スタートアップにおける知財』(動画)

https://www.youtube.com/watch?v=aJZBQrQ3lEg


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