GPUアーキテクチャであるXeの解説を担当したのはインテル日本法人 技術本部 シニア・プラットフォーム・アーキテクチャー・エンジニアの太田仁彦氏だ。
太田氏は「ここ数年の間で、当社の内蔵グラフィックスの処理性能は2倍、さらに2倍と向上してきた。今回発表する『Xe HPG』は、内蔵グラフィックスの制約を取り払って思う存分グラフィックス性能を発揮するべく開発したディスクリートGPUになる」と語る。HPGはHigh Performance Gamingの略であり、eスポーツの広がりなどで拡大する高性能3Dグラフィックスを用いたゲーム市場に対応するものだ。そして、このXe HPGを基にしたディスクリートGPU製品のブランド名が「Intel ARC」である。なお、このARCという名称の由来は、ゲームでも重要になる物語を構成する縦糸と横糸のうち、横糸を意味しているという。
PCでゲームを楽しむ上で重要なのは、ゲームソフトやそれらの映像処理を実現するための各種ソフトウェアだ。そして、ディスクリートGPUが性能を発揮するために必要なソフトウェアであるデバイスドライバーについては、2020年に内蔵グラフィックス向けのデバイスドライバーを刷新した際に、ディスクリートGPUにもスケールできるものになっており、実際に約100タイトルのゲームの動作で問題なく利用できているという。もちろん「Unreal Engine」「DirextX XII」「Vulkan」「unity」など主要なレンダリングエンジンやAPIへの対応も進めている。
ゲームのグラフィックス性能で重視されるのがレンダリングだが、表示の解像度などの品質とフレームレートなどの性能のトレードオフで苦慮する場合も多い。Xe HPGは、この課題を解決するために、品質と性能とを両立する新たな技術「Xe SS(Super Sampling)」を開発した。Xe SSは深層学習を活用した超解像技術で、ネイティブに高解像度レンダリングしたものとそん色のない画像を生成できる。インテル社内で十分に学習を行ったニューラルネットワークを用いて、周囲の画素情報や過去のフレームなどを基に超高解像化を実現している。太田氏は「Xe SSはディスクリートGPUで大幅な負荷低減を実現できるだけでなく、既に市場で導入されているCPUの内蔵グラフィックスにも展開可能だ。このことで、より多くのパートナーに活用してもらえるのではないかと考えている」と述べる。なお、Xe SSのソフトウェア開発キットは2021年8月中にリリースされる予定だ。
これまでインテルのGPUは、処理ユニットの単位として「EU(Execution Unit)」を用いてきたが、内蔵グラフィックスからより大規模なディスクリートGPUの開発に進む上ため「Xe-core」に改める。Xe HPGも、Xe-coreをベースに説明が行われた。
Xe HPG向けのXe-coreは、16個のベクトルエンジンと16個のマトリクスエンジン、キャッシュ、ロード/ストアユニットなどから構成されている。さらに、4つのXe-coreと新開発のレイトレーシングユニット、レンダリング関連の固定機能などを1つにまとめたものをレンダースライス(Render Slice)と呼ぶ。このレンダースライスはL2キャッシュを介して最大8つまで接続することが可能だ。なお、Xe HPGのXe-coreの性能は、現行最新のGPUである「Xe LP」と比べて、コアレベルで周波数1.5倍、電力効率1.5倍の性能を実現している。
Xe HPGは、Intel ARCブランドの下で2022年第1四半期に第1弾製品の「Alchemist」を投入する予定だ。その後も、「Battlemage」「Celestial」「Druid」というコードネームで次世代品の開発も計画されている。Alchemistの製造は、「IDM 2.0」戦略に基づき、台湾TSMCの6nmプロセス「N6」で行うことを決めた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.