未来への戦略的投資に積極的な先進プレイヤーは、総じて自社の考える未来を「想像」することにもアクティブです。世界最大の物流会社であるDHLは、その典型例といえます。
「Internet of Things in Logistics」(2015年)、「Omni-Channel Logistics」(2015年)、「Robotics in Logistics」(2016年)、「3D Printing and the Future of Supply Chains」(2016年)、「Sharing Economy Logistics」(2017年)、「Blockchain in Logistics」(2018年)、「Artificial Intelligence in Logistics」(2018年)、「Digital Twins in Logistics」(2019年)、「Next-Generation Wireless in Logistics」(2020年)といったタイトルで毎年のように先端テクノロジーを活用したロジスティクスの未来を想像し、レポートとして発信しています。
サプライチェーンの新潮流を「想像」しているのは、物流会社だけではありません。大手自動車部品メーカーのコンチネンタル(Continental)は「Seamless Supply Chain」(2018年)において調達・生産プロセスが最適化された未来を描いています。大手ソフトウェアメーカーのオラクル(Oracle)は「Next Generation Supply Chain Vision & Roadmap」(2018年)で次世代流通・小売ネットワークの方向性を示しています。
では、DHLやコンチネンタル、オラクルは、未来を「想像」し、その世界観を書き記すことだけを目的に資料を作成、発表したのでしょうか。おそらくは、未来を「想像」するだけではなく、そのビジョンを明示することで、未来を「創造」しようとしているのです。
つまり、パラダイムシフト的な変化が起きつつある中で、どれほど丁寧に未来を「想像」したところで、その通りの現実が到来する可能性は高くありません。あらゆる事態を「想定」したつもりでも、必ずや「想定外」の変化が起きるでしょう。であれば、自らが目指す未来を「創造」し、その実現に向けて世界を変えていくことも一考ではないでしょうか。変化の流れに乗るのではなく、自ら変化を起こすのです。
未来を「創造」する上で、ビジョンを示すことの最大の価値は、その世界観に共感し、共鳴してくれる人々や企業を広く多く集められることにあります。DHLは、数々のレポートを作成・発表することで、広く多くの人々、企業からのアプローチを受けたのではないでしょうか。それこそが真の目的だったのかもしれません。一個人、一企業では、未来を「想像」することはできても、「創造」することはできません。ビジョンを描いて、ともに未来を「創造」する「仲間」を得ることは、サプライウェブ時代を勝ち抜くためのキーストラテジーとなるでしょう。
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