イノベーションを阻害するのは日本人? パナソニックが中国地域社を作った理由製造マネジメント インタビュー(1/3 ページ)

パナソニック 中国・北東アジア社の社長 本間哲朗氏は2019年12月13日、報道陣との共同インタビューに応じ、あらためて中国・北東アジア(CNA)社設立の狙いを説明するとともに、2019年4月からの取り組みを振り返った。

» 2019年12月17日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 パナソニック 中国・北東アジア社の社長 本間哲朗氏は2019年12月13日、報道陣との共同インタビューに応じ、あらためて中国・北東アジア(CNA)社設立の狙いを説明するとともに、2019年4月からの取り組みを振り返った。

photo インタビューに答えるパナソニック 中国・北東アジア社の社長 本間哲朗氏(クリックで拡大)

パナソニックの中国進出の歴史

 現在、パナソニックは中国において85社の開発、製造、販売拠点があり、従業員数は約6万人だという。中国地域の出荷額は約2兆円でこれは外資として中国市場に進出している日系企業としては「最大級だ」(本間氏)としている。

 そもそもパナソニックと中国との関係は長く強いものがある。パナソニックの創業者である松下幸之助氏が、中国を改革開放路線に導いた鄧小平氏と1978年に会談をし、中国の改革開放路線を支持することを表明。1987年には実際に北京に第1号の合弁会社を設立して中国に進出。それ以来中国での活動を続けてきた。また、松下幸之助氏の経営理念などについても政界や経済界に広く認知されているという。「浙江省嘉興市での新工場建設のセレモニーでも多くの人が松下幸之助氏の理念を当たり前のように語っており驚いた」と本間氏は語っている。

 ただ、こうしたブランド認知などが定着している割には、パナソニックは中国市場で苦戦が目立つ。2000年代前半までは中国のGDP成長に合わせて、パナソニックも中国市場での売上高を伸ばしていた状況だったが、2009年以降は中国の成長スピードに全くついていけない状況が続いている。

photo 2002年(中国WTO加盟)を基準とした場合の、中国のGDPとパナソニックの中国地域売上高の変化率(クリックで拡大)出典:パナソニック

 こうした状況を受けて2018年7月に中国市場の対策をどうすべきかを考えるために「さまざまな部門から有志を募り40人前後のメンバーで対策ワーキンググループ(WG)を作り、8週間かけて議論してきた。その中でいくつかの問題点が洗い出せてきた」(本間氏)とする。例えば「日本を向いた経営、遅い意思決定」や「中国の価値観や市場変化への理解不足」など事業スピードの課題や、「85の拠点がサイロ化し個別戦略の集合体となっていた」や「中国人材を生かしきれない仕組み」など経営スタイルの問題などが見えてきたという。

 さらに「プレミアムへの過度な逃避」「中国サプライヤーへの適切な対応」などについても問題だったとし「プレミアム家電を戦略の中心として位置付けてきたが『主戦場から単純に逃げただけだ』という声もWGの中では生まれた。これらの議論を進める中で、日本が主導する現在の体制では中国市場のスピードについていくことは難しいと判断した」(本間氏)。そこで2018年10月には取締役会で中国専用の地域カンパニーを作ることを決済してもらい設立準備を進め、2019年4月には中国・北東アジア社を設立したという流れである。

 中国・北東アジア社の管轄には、中国だけでなく台湾、香港、韓国なども含まれるが、その理由について「グレーターチャイナという価値観も意識はしたのは事実だが、大きな要素として台湾を加えたかった。台湾はパナソニックにとって海外家電事業の見本となる地域だ。日本以上のシェアを獲得し、日本以上に高いブランドイメージを保っている。こうした姿を中国など他の地域にも広げていくことが必要となり、そういう意味で頼んでこれらのエリアを加えてもらった」と本間氏は説明している。

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