北欧型AI戦略とリビングラボから俯瞰する医療機器開発の方向性:海外医療技術トレンド(45)(2/3 ページ)
そして、デンマーク国家AI戦略のベースになっているのが、2018年4月10日、デンマークを含む24のEU加盟国およびノルウェーが共同で署名した「人工知能に関する協力宣言」(関連情報)である。これを受けた具体的なアクションの一環として、同年12月7日、欧州委員会が「人工知能に関する調整計画」(関連情報を発表している。計画の概要は以下の通りである。
- パートナーシップを介して投資を最大化する
- 国家AI戦略:2019年半ばまでに、全加盟国が国家AI戦略を策定し、投資レベルの概要を示す
- 新たな欧州官民連携パートナーシップ:AIに関する新たな研究イノベーション・パートナーシップを創設する
- 新たなAI拡大基金:欧州委員会は、AIおよびブロックチェーンのスタートアップ・イノベーターに対して、アーリーステージおよび拡大フェーズの双方で支援する
- 世界を先導するAIセンターの構築・接続:欧州AIエクセレンスセンターが構築・接続され、世界的に参照される検証施設が創設される
- 欧州のデータ空間を創造する
- 欧州委員会は、2019年半ばまでにデータ共有支援センターを立ち上げる
- 人材、スキル、生涯学習を育成する
- 欧州委員会は、各国とともに、AIに特化した上級学位プログラムや、デジタルスキル向上のための生涯教育を支援する
- 倫理的で信頼性のあるAIを構築する
- 欧州委員会は、2018年末までに「信頼性のあるAI倫理ガイドライン」草案を公表し、2019年3月に最終版を提示する
また、EU主導の「人工知能に関する協力宣言」と合わせて、デンマークのAI戦略のベースになっているのが、2018年5月14日、北欧閣僚理事会(2018年当時の議長国:スウェーデン)とバルト海諸国が連携して共同署名した「北欧・バルト海地域におけるAI」協力宣言(関連情報)である。北欧・バルト海諸国のAI協力宣言では、以下のような点について協力するとしている。
- 当局、企業、組織が、より広い範囲でAIを利用することを可能にするスキル開発の機会を向上させる
- AI利用が、北欧・バルト諸国における生活向けによりよいサービスを提供することを可能にするデータへのアクセスを強化する
- いつ、どのようにしてAIアプリケーションが利用されるべきかについての指針となり得る、倫理的で透明性のあるガイドライン、標準規格、規範、原則を開発する
- 相互運用性、完全性、セキュリティ、信頼、ユーザビリティ、モビリティを保護するために、インフラストラクチャ、ハードウェア、プログラム、データに関する国際標準規格をもたらす作業を行う
このようにみると、デンマークの国家AI戦略は、EUレベル、北欧・バルト海諸国レベルの包括的な枠組を踏まえた上で、設計・構築されたものとなっている。そのベースとなる産官学連携エコシステムでは、研究者や企業に加え、パブリックセクターの役割を強調している点が特徴となっている。
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