1973年創業のしのはらプレスサービスは、プレス機械の法令点検代行やメンテンス、改修を行う企業だ。通常、プレス加工機は、エンドユーザーが日常の中で行う点検とは別に、年1回法令点検を行うことが義務付けられている。法令点検では専門のスタッフがメンテナンスを行うが、翌年の検査までの間に故障リスクをタイムリーに検知する仕組みがないことが課題になっていた。
そこで同社は、2017年にセンサーを用いた異常検知システム「PM system」を開発した。同システムでは、これまでのメンテナンス実績に基づいたしきい値を各種センサーに設定しており、異常を検知した場合には警告や非常停止などの処理を自動で行う。導入先に複数社の加工機がある場合でも一元的に管理できるため、エンドユーザーはメーカーごとに監視システムを導入するといった手間が省け、1つのシステムで全てのプレス加工機を管理できるメリットがある。
PM systemの次のステップとして、センサーから収集したデータをクラウド上に保存し、エンドユーザーが遠隔地からでも稼働状況を監視できる仕組みを検討していたが、大手ベンダーのパッケージは導入コストが非常に高いことがネックになっていたという。
今回のプロジェクトでは、スタートアップであるフリックケアの紹介を受け、PM systemにクラウド監視機能を導入する実証実験を行った。フリックケアは、中小企業向けに生産設備のICT導入や自動化ソリューションを開発する企業だ。工作機械の稼働状況を振動で監視し、データをクラウド経由でモニタリングできるサービスなどを提供している。
実証実験では、フリックケアがクラウド側にデータを保管するシステムを開発し、クラウド上でデータを正しく保存できることを確認した。今後は、ユーザー向けの管理画面の開発、データの収集や解析を進めることで、しきい値精度の向上を目指すという。
しのはらプレスサービス 社長の篠原正幸氏は「主従関係ではなく、サービスを持ち寄ることで、互いに自立するためのヒントを得られるのがオープンイノベーションのメリット。スタートアップとの協業プロセスを経て、サービスを発展させることが可能になった」と今回のプロジェクトへの感想を述べる。
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