東京計器は2018年12月25日、同年10月に発表していた一部顧客向け製品で不適切検査があった事案の調査報告を公表した。当初より判明していた製品以外での不適切検査や、経営陣を含めた組織的な関与は見られなかったとの見方を示す。
東京計器は2018年12月25日、同年10月に発表していた一部顧客向け製品で不適切検査があった事案の調査報告を公表した。当初より判明していた製品以外での不適切検査や、経営陣を含めた組織的な関与はなく、既に出荷された製品についても「当社として継続使用が可能である」(東京計器)という見方を示している。
同事案は、同社佐野工場(栃木県佐野市)で生産する油圧弁、油圧ポンプなど一般産業用油圧機器で、検査の未実施や検査測定値が顧客仕様を満たしていない場合にも仕様内に入っているように検査成績の改ざんがあったもの。対象製品は1978年10月〜2018年7月に生産された約6000台で、2018年3月期(2017年4月〜2018年3月)売上高は約1億円に上る。
今回発表された調査報告書は、同社社長を始めとして同社取締役、監査等委員、社外の弁護士等で構成した「検査品質問題調査委員会」で作成された。外部公開用の報告書では不適切検査が発生した原因と再発防止策が述べられている。
同事案は特定顧客向け製品を担当する作業グループで行われた。このグループは量産ラインから外れた特殊な製造ラインにおいて「部品検査」「組み立て」「性能検査」の作業を少人数で分担しグループ内で完結させる、同社他部署と大きく異なる性格を持つ組織だった。
同グループで生産する製品は量産ラインでの製造に適合せず、製品担当部署が全て同グループ内に集約されていた。限定された少数従業員のみが該当製品の生産に関与する体制で、関係他部署のメンバーが応援作業を行うこともなかったとする。
さらに該当製品の検査作業について、同グループ内のメンバーであっても「全容を確実に把握し他のグループメンバーに作業を代替することは難しく、現にそのような共有化は行われていなかった」(調査報告書)とし、業務の過度な属人化や独自の業務慣行が横行していた。
また、同グループには「グループリーダー」が配置されていたが、管理職ではなく他のメンバーと同格の職責者が任命されていた。グループリーダーも書類作成業務など自己業務に忙殺されることが多く、「他の構成員に対する指導・統制的機能を発揮できなかった」。一方で、同グループを管理する管理者は課長職の職責者が担っていたが、他部署との兼務で専任ではなかった。同管理者の意識は他部署関連業務に割かれ、同グループへの関与は希薄になりがちだったという。
さらに、同社佐野工場では品質マネジメントシステムとしてISO9001を取得しており、同グループに対する品質監査は、年1回のISO認証機関による監査に加えてグループが所属する社内カンパニーでの内部監査を実施していた。しかし、「これら監査は、サンプリングかつ書類審査が中心であり、問題発見のための実効性に乏しかった」と調査報告書では指摘。また、同グループで必要とされる資格や技能認定制度の管理に不備があり、教育を含めて適正に運用されていなかったとする。
このように、調査報告書では同事案の発生原因として、特異な組織構成による業務の属人化、検査に対する意識の欠如、管理監督機能の脆弱性を挙げた。
併せて公表された再発防止策では、大きく分けて組織体制、品質監査、品質意識の強化が提示された。
組織体制の強化に関しては、QC工程票や作業指導票、検査設備を整備して「業務の見える化」を図ること、組み立てや検査に関わる人員を増強すること、担当業務の属人化を排し業務共有化を図ること等を挙げた。これら改善策について「可能な限り電子化を行い、不正が介在できないシステムを構築する」(調査報告書)としている。
品質監査の強化については、ISO認証機関による監査やカンパニー内部監査の実施に関わらず同事案が発見できなかったことを踏まえ、品質監査のあり方と実施主体を見直し実効性をともなう監査体制を構築する。カンパニー間のクロスチェックやグループ横断の品質管理統制部門を設けるとする。
品質意識の強化の面では、研修等による倫理行動基準の浸透、管理者の能動的な心構えや姿勢の強化、内部通報制度の拡充と周知等を挙げた。
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