フューチャーコンビニエンスストアチャレンジは、競技名の通り、「未来のコンビニ」をイメージした競技になる。この競技については、ルール策定などを主導した和田一義氏(首都大学東京 システムデザイン学部 准教授)に話を伺った。
課題として用意されているのは、「陳列・廃棄タスク」「接客タスク」「トイレ清掃タスク」という3つのタスク。現在、人間の店員が行っているこれらの業務を、ロボットで自動化しようという、チャレンジングな競技だ。使用するロボットは自由。1台のロボットで全てのタスクに挑む必要はなく、タスクごとに別のロボットを用意しても構わない。
陳列・廃棄タスクでは、商品の補充と廃棄を自動化する。商品は、本物のおにぎり、ドリンク、弁当を使用。陳列では、これを店頭に運び、陳列棚に置くことができれば得点となる。廃棄では、陳列棚に乱雑に並べられたサンドイッチの中から、賞味期限切れのものだけを探して回収する。同時に、残っている商品の整理も行う。
接客タスクはデモ競技である。コンビニの接客業務に関連することなら内容は自由で、例えば、弁当のあたためや、商品を勧めるようなことが考えられる。トイレ清掃タスクは、便器周辺に飛び散った模擬尿の清掃と、床に散らかったごみの片付けを行う。このタスクは、コンビニ側からの要望が強く、実施が決まったのだという。
コンビニをテーマにしたのは、実用化しやすい要因がそろっていたからだ。まず市場規模が大きいこと。店舗の数は、日本だけでも全国に5万店以上あり、経済効果が期待できる。そして比較的、ユーザーの要求を明確化しやすいこと。レイアウトやサービスがある程度規格化されているので、自動化には有利だ。
また、5年くらいで実用化できそうな課題を設定できることにも注目したという。これだと大企業だけでなく、中小やベンチャーも参入しやすく、ロボット産業全体の活発化につながる。そして、誰もが知っているコンビニならインパクトが大きく、多くの参加者を集めることも期待できる。
ところでフューチャーコンビニエンスストアチャレンジで面白いのは、各競技とも、ロボットを動かす前に、「リフォームタイム」が用意されていることだ。このとき、参加者は、設備の交換や、インフラの設置を行うことができる。例えば、陳列棚を入れ替えたり、センサーを追加しても構わない。
それはずるいのでは? と思うかもしれないが、ここに大きな狙いがある。ロボットの技術を競うのであれば、各チーム同一の環境で行っても良いだろう。しかし実際の社会実装を考えたとき、そんな制約は無意味だ。必要であれば、都合に合わせて環境はいくらでも変えられるからだ。
ロボットらしい形をしたものだけがロボットではない。周辺のセンサーや設備など、部屋全体のシステムをロボットとして考える。レジを不要にしたアマゾン(Amazon)の無人コンビニなどは、その良い例だろう。いま求められているのは、そういった視野の広いアイデアだ。和田氏は、「こちらが想像もしなかったようなものが出てきて欲しい」と期待する。
人間をロボットに置き換えて自動化するだけではなく、コンビニそのものの姿も変化していく。こうした将来のコンビニを見据え、和田氏はWRSとは別に、デザインコンテストである「フューチャーサービスデザイン」も実施している。ロボットを作る必要はなく、求められるのはアイデアだけ。ロボット業界以外から、幅広く人材を集めるのが狙いだ。
想像したものであれば、作ることができる。もちろん難しくて作れない場合もあるのだが、そもそも想像できなければ、どんなに簡単なものであっても、作ることはできない。「アイデアが一番難しい」と和田氏は述べる。WRSでどんなアイデアが登場するのか、参加者の発想に期待したいところだ。
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