国内宇宙産業の市場規模は約3000億円あるが、このうち官需が8〜9割を占め、民需は1割程度にすぎない。経済産業省 製造産業局 宇宙産業室 室長補佐の國澤朋久氏は「国内の宇宙産業は重工系としてみると規模が大きいとはいえない。しかし、官需に偏った産業構造を是正し、民需を伸ばすことができれば宇宙産業を成長させることが可能になる。そこで重要な役割を果たすのが宇宙データだ」と語る。宇宙データを誰でも使えるようになると、新しい宇宙データが求められるようになり、そのための新たな宇宙機器開発につながるからだ。「政府衛星データのオープン化は、その一丁目一番地になる」(國澤氏)。
しかし現在、政府衛星データはほとんど民間で使われていない。その理由は、データ容量が極めて大きい上に、データを利用可能な形に処理するのにJAXAに依頼しなければならないからだ。これらの政府衛星データを、利用可能な形でプラットフォームに格納し、データを分析/解析するツールも用意しようというのがTellusの目的になる。
Tellusの開発を担うさくらインターネット 社長の田中邦裕氏は「これまで宇宙データを扱うには人を集めたり投資が必要だったりした。Tellusではこの参入障壁をなくしたい。そして、宇宙データを“利用できる”ではなく、宇宙データの“利用が前提”の社会を作り出していきたい。3年後に民間移行するということは、宇宙データでもうからないといけない。そのための取り組みをxData Allianceとともに進めて行く」と強調する。
また、さくらインターネット フェローで京都造形芸術大学 教授の小笠原治氏は「Tellusの構想は1社だけでは進められないからこそ、xData Allianceが発足した。宇宙データを活用するためのクラウドについては、当社が本業としてしっかり開発を進める。xData Allianceでは、宇宙データを扱うさまざまなツールの開発や、まだまだ少ない宇宙関連産業の従事者を増やしていくような育成も担う。また、宇宙データと地上空間データの組み合わせによる活用も必要だ。宇宙データは、20〜25年前のインターネットと同じで、多くの可能性を秘め、常に進歩を続けるだろう。われわれも、その前提で取り組みを進めなくてはならない」と述べている。
なお、アクセルスペースは現在、50基の超小型衛星「GRUS」で全球の観測データを取得するプロジェクトを進めている。Tellusは、まずは政府衛星データが対象となっているが、GRUSのような民間宇宙データも融通できるような仕組みも実装していく方針。その方向性や開発要件については、xData Allianceで整理されることになる見込みだ。
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